新世代オフィスのかたちを具体化するスコットランド王立銀行(RBS)

2018年7月

急速に変化しつつある対顧客環境でイギリスの銀行グループはその変化に対しデジタルワークプレイスの構築を急いでいます。RBSデジタルオフィスプロジェクトを統括するスティーブ・ウッドに、その展望を聞きました。

スコットランド王立銀行(RBS)のCEO、ロス・マキューアンは毎月のRBSイノベーションフォーラムにグループの全部門長を招集します。そこでのテーマはただひとつ、デジタル革新です。

他行同様RBSでも、顧客環境の変化にともないデジタルやモバイルによる営業モデルを模索しています。技術革新を求めるのは経営層だけではなく、顧客行動の変化を肌で感じそのためのツールを必要とする現場もまた上層部とともに危機感を共有しています。

しかし、そうした革新を実現するためには、旧来のユーザーのあり方やデスクトップ中心のオフィス環境を抜本的に見直し、デジタルオフィスへ移行する必要があります。

新時代の顧客の声に応える

銀行にとっての最重要資産とは、顧客との関係です。RBSデジタルオフィスプログラムはその顧客との関係の変化に積極的に応えていかねばならないと、同プロジェクトを統括するスティーブ・ウッドは考えています。「デジタル革新を求める声が高まり、社員に技術やツールを提供する手段を抜本的に見直すことになりました。」提供される技術と現場ニーズとの整合性も検討しなければなりません。「顧客を取り巻く環境は急速に変貌しています。年齢層もサービスの使われ方も昔と違います。かれらはアマゾンやフェイスブックなどのようなサービスを求めているのです。顧客サービスの提供において銀行はアマゾンやフェイスブックと肩を並べるくらいにならなければなりません。」

そのためには社員を技術武装させ、新しいツールをすばやくダイナミックに使えるようにしなければなりません。どんなに難しくとも、インターネット型リソースベースで情報提供していくやり方の先を行かなければならないのです。とはいえ、そうした仕組みによってこれまで慣れ親しんだ情報検索のやり方が変わるわけでもなく、また簡単に顧客に役立つ情報を探し当て、そこから価値を抽き出せるというわけでもない、とウッドは話します。

真のデジタルワークプレイスを実現するひとつのステップとして、RBSは社内用の顧客対応デジタル成熟度モデルを作り、今後必要となる社員同士のコラボレーションを活性化させています。「これにより、もっと効率的、生産的なやり方で互いのナレッジを共有していく力を育てます」とウッドは話します。「デジタルワークプレイスなしでは顧客の声に応えられず、望まれているなかたちで仕事を進められません。」

ワークプレイス革新のためのビジネスの必須課題

背景に経営層の意向があることはあきらかです。「事業戦略として、顧客サービス、提言、信頼においてトップ銀行になることを目指していますが、そのためには革新性と創造力が不可欠です。技術の力で顧客と有意義な関係を築かなければなりません。」

顧客とのコミュニケーションをさらに価値あるものにする最新技術をまとめて社内に提供できれば、顧客との関係自体が変わってくる、とウッドは話します。

そして、この仕事はトップダウンで行われています。「ひとつには、顧客サービスをもっと良くしたいという思いが経営陣にあり、そのために技術を使えということです。これは真の変化です。この流れのなかでイノベーションや対顧客の創造性を尊ぶ空気が生まれ、その方向で物事は進んでいきます。」

デジタルオフィスにはまた別の側面もあります。「技術で職場環境を革新するということです」とウッドは話します。「これは、RBSの新しい価値観や社風を表しています。」

進化するRBSデジタルオフィスの特徴として、彼は次の点をあげています。

• デバイスに依存せず、モバイルやクラウドサービスを活用して、いつどこでも仕事ができる環境を提供し、社員の能力を高める
• Jira、FishEye、Butbucketといったデジタルツールを提供し、さらにAtlassian社開発のコラボレーション基盤Confluenceにツールを完全統合
• DevOpsなどの手法で対顧客、対社員両方のアプリやそのアップデートを開発し常時展開
• 真に役立つナレッジ管理機能を提供
• プロジェクト管理、コンテンツ管理、カンファレンス管理、オフィス生産性管理などマイクロソフトOffice 365の管理機能を積極活用
• 社員と顧客間の情報共有のための広範囲にわたるソーシャルツールの活用(特にフェイスブックのWorkplace)。社内で70,000人が利用するWorkplaceは「コラボレーションで組織を連携させるのに有効で、職場としての優位性を示す意味でも素晴らしいツール」とウッドは話します。「ソーシャルメディアを通じ顧客サービスを提供する場合、どうすれば一番いいのかも教えてくれます。」

クラウドで顧客対応強化、コスト削減も

RBSデジタルオフィスプロジェクトでは、業務プロセスのクラウド化ははっきりした流れとなっています。「クラウドの活用は今後間違いなく増えていくでしょう。社員と顧客の間の壁をなくすのに効果的ですから」とウッドは話します。

また、デジタルオフィスへ移行するということは、コスト削減のニーズとも密接につながっています。「クラウドやモバイル技術は、運用経費を低減させます」と彼は話します。

しかし、それは一企業だけでできるものではありません。「デジタル革新を進めるには、パートナーとの緊密な協業が必要です。目標達成のためにはエコシステムを構築しなければなりません」とウッドは話します。

デジタル革新では、仕様やコストといったありきたりの相談以上のものが求められるので、企業同士の対話が深まる、それが特徴のひとつだとウッドは話します。「デジタルスペースに関して話をするような場合、これまでのようなやり方は役に立ちません。求められているのが、デスクトップPCの展開やカスタマーサポートのような製品よりの支援サービスではないからです。」

「話をする内容も自ずと変わっていきます。パートナーにRBSの考えや、顧客に向けて何をしたいと思っているのかを理解してもらわなければなりません。そうでなければ、私たちの求めているものは提供されないと考えています。そのため、パートナーとの関係もずいぶん変わりました。」

デジタルオフィスの共創

また、サプライヤー同士も仕事の仕方が変わってきています。たとえば、グローバルICT企業の富士通はRBSのデスクトッププラットフォームを運用していますが、大手企業が自らのネットワークを駆使し、関係会社や専門的人材と連携して仕事を進めることが重要だとウッドは考えています。「RBSやその顧客だけでなく、サプライヤーも益するエコシステムが必要です。銀行だろうとテクノロジー企業だろうと、この仕事を単独でやりきることはできません。したがってパートナーシップが不可欠になります。今後は共創こそソリューションを生み出す唯一の方法となってくるでしょう。」

RBSでのワークプレイス変革は大仕事となるでしょう。業界自体の腰の重さがその理由のひとつだとウッドは話します。

「これまで銀行業は、技術の導入に関しペースが比較的遅かった」とウッドは話します。この対処法としてRBSはDevOpsの手法を採り入れました。「経営陣は気長に待ってはくれません。顧客サービスでトップの銀行になりたいと考え、そのためには先進技術を使うべきだと考えています」と彼は話します。DevOpsの力がイノベーションを後押しし、アイデアをすばやくアプリ開発につなげることで、社内革新も加速しています。

デジタルオフィスは、社員が必要だと感じる新しい機能やツールを常に豊富に提供します。「ユーザー用一般アプリは常時アップデートされます。年に一度予算をかけて機能強化しリリースが行われていたかつての企業向けソフトウェアとは大違いです。現場への展開も加速し、ソフトウェアの開発と配信もユーザー向けにもっと変えていかなければと考えています。」

ここで課題となるのは、やはりセキュリティだ、とウッドは指摘します。「大事なのは顧客の信頼です。セキュリティ製品やバックエンドのインフラは、そうでもありません。金融サービスのよさで顧客はRBSを信頼してくれています。それだからこそ、RBSの技術ソリューションもリスクに強く安全であることを示す必要があります。」

RBSはこのところサイバーセキュリティ強化にかなりの予算を投じていますが、セキュリティと顧客体験の間には相容れない部分があるとウッドは話します。「社員にとっても、顧客にとっても、ツールがより使いやすくなるように整えていく必要がありますが、その一方で安全性に不備があってもいけません。」

彼が最後に挙げた課題は、新規サービスを吸収する社員の能力です。「かれらの仕事は顧客対応ですので、全員がツールを使いこなすことはできません」とウッドは話します。フェイスブックのWorkspaceであれば、かれらはフェイスブックの使い勝手に慣れ親しんでおり、比較的直感的に使いこなせます。したがって社内トレーニングは不要で、どんなヘルプデスクも必要ありません。「Workplaceはユーザー任せで管理できるので効率的です」とウッドは言います。トレーニングを要する他の技術についても、今後は導入やサポートが手軽なものになってほしいと彼は考えています。

このことからもわかるように、デジタルオフィスは従来のコンピューティング環境の常識を変えるものです。「まだ道半ばですが、古い技術ややり方は徐々になくなりつつあります。コストモデルも以前とは違います。やるべきはビジネスのデジタル革新。そのための技術やツールを、いま誰もが歓迎しています。」