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顧客の囲い込みと生産性のさらなる飛躍に挑むペプシコ

2019年4月

データ分析とパーソナライゼーションでいかに消費者から信頼を獲得し、デジタル革新と“IT戦士”を活用して、いかに業務サービスを効率化するか。ペプシコのグローバル CIOジョディ・デイビッズ氏が語ります。

アメリカを代表するグローバル企業として、ペプシコは1世紀にもわたり飲料業界を牽引してきました。同社は1960年代よりスナック業界でも大きな存在感を示しています。7up、トロピカーナ、ドリトス、レイズポテトチップスなど数々のブランド商品が全世界で生み出す年間売上げは、2018年で650億ドルにも上ります。

ペプシコは、主に優良企業の買収によって成長を続けてきましたが、常に厳しい市場競争にもさらされています。その多くである、超効率的なビジネスモデルで戦いを挑んでくる新興企業は手強い相手です。それら企業への対抗手段として、ITを駆使したコストダウンと生産性向上、そして何百万もの消費者顧客による囲い込みを進めています。

ペプシコ社グローバルCIO ジョディ・デイビッズ氏 カーディナル・ヘルス、ナイキ、ベストバイ、アップルなどでIT上級職を歴任し、ペプシコのグローバルIT部門を30年にわたり統括してきたジョディ・デイビッズ氏は、デジタルによる常識破壊が常態化しているこの時代において、企業の事業成長にはテクノロジーを活用した「消費者志向の革新が不可欠」と話します。そのための必要条件として彼女が掲げるのが、データ分析とパーソナライズです。具体的には、需要の予測分析、リアルタイム・マーケティング、ダイナミックな販売力、顧客志向の商品提供などを意味しています。

デイビッズ氏の上司で、2018年からCEOとしてペプシコの舵取りをするラモン・ラガータ氏は、そうした一連の取り組みを“カスタマー・インティマシー”と呼んでいます。ニューヨークの顧客分析グループに向けて、彼はこう語りました。「消費者の動向把握をさらに細分化する必要があります。以前は数百万単位でものごとを考えてきましたが、これからはあらゆるデータを駆使して世帯ごと、個人単位で顧客動向を把握しなければなりません。発信するメッセージについても、現在は100のターゲットに20種類程度ですが、将来的には100万のターゲットに1,000種類のメッセージを流していく必要があります」。

さらにラガータ氏は語ります。「最終的には価格もパーソナライズしていきます。購入価値を最大化するため、少なくともグループごとの調整があって良いと考えます。そのための投資をいま行っています」。

当然そこには個人情報に対する懸念があり、デイビッズ氏は、そうした仕事を進めるにはまず顧客からの信頼を得ることが先決だと話します。

生産性をいかに高めるか

市場変化はめまぐるしく、特にこのところeコマースのプラットフォームが成長を続けています。ペプシコが顧客データ分析を急ぐ理由もそこにあり、消費者動向の把握が今後の事業成長の鍵を握っています。

例えば、アマゾンなどダイレクトチャネルによる同社の年商は10億ドルとなっています。しかし、そうしたチャネルのユーザーはリアルタイムに価格比較をしており、ペプシコの2018年の年次会計報告書にはそれによる価格競争激化の懸念が示されています。一方で、卸売り、フードサービス、食料品店や雑貨屋、コンビニ向け販売などの従来型チャネルは、売上げ全体において大きな割合を占めています。

2014年の業務改革プログラムで、「新たなテクノロジーとビジネスモデルによる業務プロセスの簡素化、統合、自動化」、「市場ベースの自動化を含むマーケティングシステムと情報システムの刷新」、「組織のリーン化と製造およびサプライチェーンの最適化」を掲げてきたペプシコは先ごろ、それをさらに進める“生産性計画2019”を発表しました。これは事業成長におけるIT技術の重要性を認識した長期計画です。

4年以上かけて25億ドルを投資する本計画では、全世界における事業サービスの共有化を目指しています。これまでもデイビッズ氏は、製品や地域ごとで異なる事業サービスの統合に積極的に取り組んできました。

先の顧客分析グループの会合でラモン・ラガータは「これからはデータ志向で効率化や生産性向上をはかり、事業のコスト構造を全体最適化していく」とも語っています。一例として、メキシコ市場では配送ルートを最適化する技術を用いて、配送トラックの数を25から22に14%削減しました。

求められるリーダーシップ像

そうした目標を達成するためには、しっかりした人材とリーダーシップが欠かせません。3,100ものスタッフからなるグローバルIT部門を率いるデイビッズ氏は、「この仕事では人材がかなめ」と語ります。

仕事を円滑に進める条件を彼女は、戦場の兵士の特徴になぞらえ、こう定義します。すなわち、戦う姿勢を持つこと、集団で任務にあたること、諦めないこと。「そのためには、測定可能な明確な目標、そして事業の強み、改善点、成功要因をしっかり把握することが必要です」。

カーディナル・ヘルスやペプシコにおいて、企業買収を軸とする事業体制やその技術支援で実績をあげてきたデイビッズ氏は、最後にこう言葉を結びました。「この仕事の成功の秘訣は、最善の布陣を敷いてチームを信じ、彼らに仕事を任せることです」。

・本記事は、ロンドンで開催された「クラウド・エキスポ・ヨーロッパ」のジョディ・デイビッズ氏の講演をもとに作成しています。