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情報の真偽

2019年5月

未来を左右するような判断をする場合は(たとえそれが政治家であれ、経営者であれ、私たち自身であれ)客観的な事実に基づいて行わなければなりません。私たちの物事の見方の理解をうながすと同時に、それを捻じ曲げてしまうこともできうるテクノロジーについて、ベストセラー『FACTFULNESS』の共著者、アンナ・ロスリング・ロンランド氏が語ります。

アンナ・ロスリング・ロンランド氏は、偽の情報を失くすことをミッションに掲げています。2018年にベストセラーとなった『FACTFULNESS:10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』の共著者として、発展途上国で暮らす多くの人に大きな影響を与える重要な判断について、思い込みのない客観的な事実をもとに行う必要性について述べています。しかし、フェイクニュースや、SNSによって拡散された虚偽の情報、現実を歪めて見せることができるAIやVRのような技術に溢れたこの時代において、私たちは様々な場面で客観的な事実をもとに物事を判断することができるかどうかが、重要となってきます。

アンナ・ロスリング・ロンランド氏 彼女が義父のハンス・ロスリング氏と、統計学者であり夫でもあるオーラ・ロスリング氏と書いたこの本は、各方面から賞賛を浴びています。例えば、バラク・オバマ元アメリカ大統領もその一人で、次のように語っています。「思い込みではなく、事実をもとに行動すれば、人類はもっと前に進めるはず。そんな希望を抱かせてくれる本」。また、ビル・ゲイツ氏は「これまで読んだものの中で特に重要な本のひとつ、世界について明晰に考えるために必携の書」と評しています。この本は彼女たちが設立したギャップマインダー財団から生まれたものです。アンナ氏は、統計データをわかりやすく見せるトレンダライザー(Trendalyzer)というソフトウェアを夫とともに開発しました。これは統計値を風船図に変え、それをアニメーションで表示するものです。Googleはこのソフトウェアに関心を示し、2007年に買収し、開発チームを同社に招き入れました。

2010年に彼女たちは財団に戻り、無料の教材の製作を開始します。その活動の中であることに気づきました。重要政策の根拠となる統計データを人々がどれだけ理解しているのかについて調査したところ、地位や学歴に関わらず、ひどく歪んだ目で世界を見ていたのです。『FACTFULNESS』のアイデアはこの気づきから生まれました。以来、彼女は近視眼的なものの見方に疑いを持って見るようにしています。たとえば“Dollar Street”という取り組みでは、50カ国にまたがる264の家族の日常写真を一目で確認できるように並べ、それぞれの暮らしぶりを表します。「台所」や「トイレ」といった言葉が、異なる国の異なる家族にとって、どのようなことを意味しているのか、これを見れば直感的に理解することができます。そうすることでグーグル検索の弊害に染まった西欧の偏狭なものの見方から解放されるのではないか、と彼女は語っています。

アンナ・ロスリング・ロンランドに聞く

FACTFULNESSについて

「事実にもとづく見解だけを語る、ストレスの少ない習慣。まず、この世界についてどれだけ正しく理解しているかを測り、思い違いを気づかせるための情報や背景を提示。さらに事実に即した、ものの見方を養うツールを提供します」

テクノロジーの影響について

「テクノロジーが私たちの物事の見方を歪めているかどうかはわかりません。テクノロジー自体が不正な情報を作って世に送りだすのではなく、それを作るのは常に人間だからです。AIやアルゴリズムを作る人が間違えてプログラミングを行えば、その間違いが、私たちが使用するテクノロジーに反映されてしまいます。もしそうであれば、最大の問題はどれだけ私たち人間が、精度の高いAIやアルゴリズムを作れるのか、ということなのかもしれません」

グローバルな課題の解決について

「どのようなテクノロジーにも何かしらの問題はありますが、重要なのはテクノロジーにもともと備わっている潜在力です。それが世界の難題を解くのに役立ちます。まだその力は目覚めたばかりだと思います」

情報の民主化について

「歴史上初めて、誰もが情報を手にすることができるようになったのは、テクノロジーのおかげです」AIの活用について「データから大切なことを見つけだし、現実に何が起こっているのかすばやく効率的に教えてくれるというのが、AIの最大の特長ではないでしょうか」データリテラシーについて「いまから10年後、あるいは20年後には、データを扱える人が増え、データから判断を行うことを専門とする仕事も出てくるかもしれません。その頃には私たちは、データをうまく活用する術を身につけていることでしょう」

FACTFULNESS やDollar Streetについて、詳しくは以下サイトをご覧ください。
Gapminder.org