英国物流大手ヘルメス社、コロナ禍のなかファッションから食品の宅配へ

2020年6月

新型コロナウイルスの感染拡大で社会的ニーズが変化しています。企業はいかに機敏に事業の転換を図るべきでしょうか?そして、そこでITはどのような役割を果たせるのでしょうか?物流大手ヘルメス社UKのCIO、クリス・アッシュワース氏が語ります。

「ヘルメス社UKは事業規模でイギリス第2位の物流会社です。今年の2月まで、IT部隊は例年通り、小売顧客の利便性や競争力を高める技術開発に不満なく取り組んでいました。しかし、3月になって、イギリス国内で新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、事態は一変しました。

ロックダウンが宣言されたとき、今後の事業について方向性の見直しに迫られました。当初、感染症防止には宅配などの活用が重要だと政府は語っていましたが、感染防止規制を守るには膨大な情報を処理する必要がありました。ファッション系の小売店が自粛したあおりを受け、オンラインショッピングの宅配が大きく落ち込みました。

しかし、こういう時こそ機敏さが大切です。それまで食品の宅配を手がけたことはありませんでしたが、衝動買いでスーパーが品薄になり、配達サービスも滞る状況でしたので、食品メーカーをはじめ小売店や卸売店から宅配サービスの打診がありました。業界全体がビジネスモデルの転換に迫られていたのです。そうした需要にすばやく応え、起死回生のお手伝いをするのは素晴らしいことです。

ヘルメス社UK CIO クリス・アッシュワース氏 まずは社員とお客様の安全のために、仕事のやり方を変えていく必要がありましたが、そこに不安はありませんでした。安全な配達場所を指示するツールや、配達証明の写真を送るツールなどをアプリ内に開発していたので、それが非接触の配送に役立ったのです。

そのほかにも、『マイ・プレイス』を急いで開発しました。これにより、正確な配達場所の指定、荷物を受け取るためのPINコードの入力、配達所や宅配ロッカーなどの受け取り場所の指定、途中の経由地の追加などが可能になります。これらはすべて自粛期間中にお客様が自宅で安心して商品を受け取れるようにするためのものです。

受注急増に対処

ロックダウンから2週間ほどで食品の宅配注文の数は、年末のクリスマス時期ほどに急増しました。通常は半年ほどの準備期間がありますが、この突然の受注増はなんと6日間で起こったのです。幸い、弊社はITの完全クラウド化を決めており、2月末までにその作業は完了していました。そのため受注に対するスケールアップのコストを心配せず、急増に対応できたのです。

それだけではありません。テレワーク用のノートパソコン700台を短期間で調達したり、自粛でITスタッフが足りなくなったお客様のサポートにあたったり、いろいろとやるべき事がありました。年初には円滑なテレワークをサポートするためマイクロソフトのビデオ会議システムMicrosoft Teamsを全社に導入しました。これにより、中断することなく安定した事業運営ができています。

方向転換は決して易しいものではありませんでしたが、コロナ渦のなか小売業界でとにかく事業が継続できているのは幸いなことです。先の見通しは依然として不透明で、課題も山積していますが、IT部隊の士気は高く、スタッフのやる気には目を見張ります。パンデミックの中でも立ち止まることなく革新を続けていくことで、社員やお客様を力強く支えながら、この苦難を乗り越えていこうと考えています」。