Fujitsu CEO and chief digital transformation officer, Takahito Tokita

2020年の課題に直面し、より良い未来をリイマジン(再構想)

2020年11月

新しい働き方や組織のあり方、危機対応力が問われるこの時代。企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)でいかに難局を乗り切れば良いのでしょうか。富士通のオンライン形式によるグローバルフラグシップイベントデジタルイベントFujitsu ActivateNowにて、その方向性についてご紹介しています。

「より良い未来へと向かうため、これまでの組織や社会のあり方をリイマジン(再構想)するべき時が訪れています。まさにこれは、事業や働き方を心機一転する絶好の機会と言えます」。

今年からバーチャルでの開催となった富士通のフラッグシップインベントFujitsu ActivateNow(旧・富士通フォーラム)でそう語ったのは、富士通 代表取締役社長兼CDXOの時田隆仁。その声には機敏な対応を要する時代の大きな変化への緊張感が漂っていました。

2020年コロナ禍が世界に広がるなか、富士通は自社のあり方をいま再び再構想すると同時に時代の激流に襲われているお客様の事業改革を支援していると時田社長は話します。その取り組みの多くは「不可能と思われるような難題だった」と言います。

一例として挙げられたのは、富士通のグローバルデリバリーセンターです。世界8カ国に広がるこの組織は、お客様企業向けにヘルプデスクやアプリケーション開発といったサービスを提供しています。今年の初めには全従業員の95%がオフィスで勤務していましたが、ほぼ全員にあたる23,000名に上る同センターの従業員が、テレワーク体制に移行しました。それはまさに顧客企業のサポート需要が高まった3月。その移行に要した期間はわずか10日でした。

富士通のお客様先でも同様のことが行われています。例えば、ニュージーランド自然保護局では3日ほどで2,000のバーチャルワークプレイスを構築。イギリスのガス電力事業者セントリカは週末だけで1,400台のテレワーク用ラップトップPCを展開しました。

また、最新技術が効果を挙げている事例もあります。コロナ禍の影響が拡大し始めた頃、富士通は24時間365日情報提供できるAIベースのチャットボットを自治体向けに展開しました。国立研究開発法人理化学研究所(理研)様と富士通が共同で開発している、世界最高水準のスーパーコンピューター「富岳」は、新型コロナウイルスの飛沫感染予測、ロックダウン時の経済的な影響をシミュレーション、治療薬候補の探索の研究開発に活用されています。

「こうした仕事を通じて、お客様との信頼関係を築き、深めている」と時田社長は話しています。

激流への機敏な対応

グローバルにペットケア事業を展開するマースペットケアやみずほフィナンシャルグループなどがオープニングキーノートに登壇しました。これらの企業は、「危機に立ち向かう強さを身につけるため、デジタル技術の重要性を認識し始めている」と言えます。


マースペットケア グローバルCIO ミャオ・ソン氏



マースペットケアのグローバルCIO ミャオ・ソン氏は、同社がコロナ禍のなか、堅牢なITインフラとクラウド戦略が、いかに迅速にテレワーク体制を整え、顧客の新たな要望に応えていくのに役に立ったのかについて語りました。

「アジャイルアプローチで新市場へ事業拡大することで、代理店を経由せずペットオーナーに直接商品を届けることができるようになった」と彼女は話します。さらにソン氏は「今の状況には、技術の力で日常を一変させていくチャンスがたくさんある」とも話しています。

株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役専務 デジタルイノベーション担当役員 兼IT・システムグループ長 兼 事務グループ長の石井哲氏は、国内銀行で進行中の改革について語りました。人口減少や高齢化に加え低金利政策など日本の社会経済を襲う時代の流れは、みずほにとって「最新技術の力を採り入れ、事業改革への道を拓くもの」だと話します。

富士通をパートナーとして、新勘定系システム「MINORI」にリンクしたタブレットを銀行の各店舗に導入。これによりお客様は窓口での順番待ちもなく、口座開設、預金引き出し、住所変更などの手続きを行えるようになりました。

このシステムは支店でのサービス強化や従業員教育にも役立っていると石井氏は話します。「お客様との信頼関係を築きそれを維持していくには、変化に柔軟に対応し、事業のスタイルやプロセスを変え、新しい技術やスキルを積極的に活用していくことが不可欠です」。


株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役専務 デジタルイノベーション担当役員 石井哲氏



新たな働き方のかたち

時田社長は働き方改革を優先事項のひとつに数えます。「この新たな世界における組織のあり方や働き方を実践していきます。『Work Life Shift』という新しいコンセプトを導入してこれまでのやり方を改め、それに合わせた勤務ポリシーや職場文化を創り出そうとしています」。この改革はすでに8万人の富士通社員を対象に始まっています。

Fujitsu ActivateNowでは、ロンドン・ビジネス・スクールの教授で、経営や人材戦略における第一人者であるリンダ・グラットン教授も登壇。これからの職場や働き方のあり方について語っています。コロナ禍でテレワークが広がるなか、旧来のオフィススペースについて疑問が投げかけられています。会社に通勤することがなくなることはないとしながらも、職場としてのオフィスの役割は変わってくるだろうと彼女は話します。

「これからオフィスというものは、終日ただ机の前に座って仕事をする場ではなく、セレンディピティ(偶然の発見)、コラボレーション、コーポレーションの場となっていくでしょう」と話します。

こうした文化的な変化は、新たな創造性や柔軟性を育てます。富士通の場合も、オフィスは日常業務をこなす場から同僚や顧客とつながり、連携するコラボレーションの場として生まれ変わろうとしています。

グラットン教授によれば、コロナ禍以前の状態に戻りたいと願う人は全体の8%ほど。これはすなわちコロナ禍のもたらす変化は今後もずっと続く可能性が高いということです。労働文化はこれまで凍結されていたとグラットン教授は話します。「以前は誰も昔ながらの働き方について疑問を挟むことはできませんでした。しかし、コロナ禍が労働や人のあるべき姿を変えていくにつれ、その固定観念が融解しはじめています」。

危機への強靭さ

また、ビジネスモデルキャンバスの生みの親であるアレックス・オスターワルダー氏も新潮流について語っています。いま、企業が直面しているさまざまな難局を乗り越えていくためには、ビジネスレジリエンス(危機に対する事業の強さと柔軟性)が鍵となると説きます。


Strategyzer 共同設立者 アレックス・オスターワルダー氏



難局に挑む企業に向けて、オスターワルダー氏はこう助言します。

・常に組織を刷新すること(特に業績が最高潮の時期に)
・技術、製品、価格ではなく、イノベーションを活用したビジネスモデルで競争すること
・業界の壁を越えること(超優良企業はもはや単一業界に閉じこもってはいない)

これに関して、時田社長は「富士通の多くのお客様企業はビジネスレジリエンスのためのテクノロジーの重要性を認識されている」と話します。しかし、さらにそれを支えるものとして明確なパーパス(社会における企業の存在意義)の重要性も説きます。富士通はコロナ後の世界を見据え、自社のパーパスを発表しました。わたしたちのパーパスは、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」ことです。