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偉大なリーダーがイノベーションをリードするという神話を崩せ

2016年2月

従来の企業経営モデルは、持続的にイノベーションを起こす組織要件を備えていない — ハーバード・ビジネス・スクールのリンダ・ヒル教授はそう語ります。

市場のグローバル化や産業のデジタル化が企業を不断のイノベーションに駆り立て、経営陣はその流れを作り出すため、かつてないプレッシャーにさらされています。

しかし、大学や産業界では、イノベーションを持続的に生み出していくプロセスやスキルについてほとんど理解が進んでいません。ハーバード・ビジネス・スクールで経営学の教鞭を執り、『Collective Genius: The Art and Practice of Leading Innovation(ハーバード流 逆転のリーダーシップ)』の共著書を持つリンダ・ヒル教授はそのように話します。

「イノベーションというものを理解するうえで、誰もが誤った理解を持っていることがあります。それは何でしょうか?」。インタビューのなかで彼女は問いかけます。「一番の問題は、イノベーション神話を信じていることです。次々とアイデアをひらめく天才がいる企業が革新を起こすのだという幻想です」。

ピクサー、ファイザー、フォルクスワーゲンといったイノベーション企業を研究した彼女は、革新的なアイデアがたったひとりの天才に起因することはないにもかかわらず、経営者の多くはそう考えていないという思いを強めます。

天才のひらめき?

「経営学ではこの説の誤りはすでに常識と考えられていますが、企業経営者たちはいまだに天才のひらめきという神話を信じ込んでいます。イノベーションが事業成長の鍵だと気づき、奮闘している企業を見ると、たいていの場合、天才のアイデアを探し求め、いい考えがひらめきさえすれば、この先事業は安泰だと思い込んでいるのです」。

しかし、「イノベーションとはそういうものではなく、そのようなモデルに頼っていては、結果は出てこない」と彼女は強調します。

IT業界ではそう思わない人も多いでしょう。というのもIT業界では「本当のイノベーションは、スタートアップから生まれている」と広く信じられており、イノベーションに関しては大企業も苦戦を強いられているからです。しかし、現実は逆だとヒルは言います。スタートアップは失敗する確率が高く、たいていは事業を拡大できません。

「これまでの企業経営モデルは、持続的なイノベーションの組織要件を備えていません」

経営はビジネススクールで学び、イノベーションは事業でということも、こうした状況を生む原因になっているかもしれません。

「従来の企業経営モデルは、持続的なイノベーションの創出につながらない」と彼女は主張します。イノベーションの創出というのは、ひらめきではなく、経営スキルだからです。

2015年の経営思想家トップ50(Thinkers 50)において、イノベーション特別賞を受賞したヒル教授。彼女は「経営とイノベーションの2つを見比べていると、後者が経営改革や事業運営とは別物なのだということに気づかされます」と話します。

今日ほどその別物のためのスキルが必要とされているときはありません。「経営が簡単であった時代はありませんが、それが現在、さらに難しさをましています。というのも、経営者は事業の舵取りと同時にイノベーションの舵取りもしなければならないからです。いま、経営者には2つのそれぞれ異なる姿勢とスキルが求められているのです」。

写真 – ウェブ・チャペル