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デジタルの優先事項におけるバランスに挑む企業

2017年11月

デジタル・スキルの欠如、ITプロジェクトを戦略的にコントロールできない、失敗への恐怖感などが、企業のデジタル革新の進捗を阻んでいます。しかし、ビジネス界の意思決定者を対象としたグローバル調査が示す通り、悪いニュースばかりではありません。

企業は、ビジネスの未来に対する戦略的重要性の理解という点では大きく進んでおり、デジタル革新は現実のものになろうとしています。14カ国のビジネス界の意思決定者1,625人を対象に行ったデジタル革新調査 PACTによると、ほぼ半数(46%)の企業がデジタル革新プロジェクトを完了し、既に成果を得ています。さらに、大多数(87%)の企業が、現在はイノベーションの文化を社内に確立できていると回答しています。

しかし、グローバルICTベンダーとして富士通が行った本調査では、ビジネス側の意図と計画の実行能力の間に乖離が存在する分野も浮き彫りにしています。例えば、90%が明確なデジタル戦略を定義していると回答しているものの、4分の3の企業は戦略的枠組みの外でデジタル・プロジェクトを推進していると認めています。(典型的な、IT部門を無視して利用されるという「影のITプロジェクト)のことを指します)こうした流れが、組織に大きな問題を提示していると答えた企業は69%でした。さらに、回答者の3分の1が、過去2年以内にデジタル革新のプロジェクトを中止した経験があり、失敗したプロジェクトの平均コストは50万ユーロを超えていることが、より大きな懸念事項として考えられます。

こうした大きな費用が掛けられていることを考えると、10社のうち7社がデジタル・プロジェクトにおける大きな障害として「失敗への恐怖感」を挙げたことは驚くべきことではないでしょう。多くの場合は、プロジェクトにコミットするためには「危険なまでに高いコスト」が必要だという思い込みがあるためです。より大きな自信につながる可能性のある代替のアプローチは「アジャイルで低コストのプロジェクトを数多く実施し、失敗しても破産せずにインサイトを得ていくことだ」と本調査では述べています。

では、企業はいかに「早く失敗する」能力を身につければよいのでしょうか。アジャイルなデジタル戦略を作り、プロジェクトが想定通り進捗していない場合に容易に、かつ迅速に調整できる事業計画を持つことが重要です。こういったことを効果的に実施するには、4つの鍵となる要素である人材(People)アクション(Actions)コラボレーション(Collaboration)、そしてテクノロジー(Technology)といったPACTの均衡をうまく取る必要があります。本調査で各分野で成功するための条件を定義していますが、いずれか1つの分野で合格点を取った企業は調査対象の企業の5分の1未満でした。

人材 – スキルに全精力を集中

適切なスキルを得ることは、PACT調査の回答者の中でも重要な要素として認識されています。多くの企業は、テクノロジーの進歩があまりに早く、最新のスキルを確保する、またはデジタル・スキルに適したレベルを取り入れることが難しいと考えています。調査対象の企業の70%が、自社でデジタル・スキルが明確に欠如していると認めています。しかし、多くの企業が適切な対応を取っています。調査対象企業の90%は、デジタル・スキルへの接点を改善するため、社内と社外の両面で対策を取っています。46%はギャップの一部を埋めるために採用を検討しているものの、既存の人材を育成することに、より大きな重みを置いています。また、回答した企業の半数以上(56%)がトレーニング・プログラムに投資をしており、39%は組織全体で専門知識を共有するためコラボレーション・ツールを活用しています。

アクション – デジタルを影の存在から表舞台へ

本調査によれば、企業の「公式な」デジタル・プロジェクトでは既存のプロセスと並行する、または既存のプロセスを増強する新たなプロセスが構築されています(全体の約60%)。物事の進め方の根本的な革新につながったのは、4分の1未満(37%)でした。この場合、事業での混乱を最小限に抑えられるかもしれませんが、過剰に保守的な戦略により、企業は最も革新的な変化を取り逃がすことになりかねません。最も根本的なプロセスの変化は、実は、気づかないところで起こっているのです。回答者の91%が自社にはデジタル・プロジェクトの明確な評価プロセスがあると確信しているものの、影のITの取り組みはそういった監視を免れています。つまり、こうした影で進行しているともいえるプロジェクトは管理対象とならず、終了してしまうことがよくあります。全社的なビジネス革新プログラムにより、プロジェクトを継続的にベンチマークし、部門別でIT支出を確実に担うように出来ます。それが、デジタル・アジリティを維持するために必要な戦略面とコスト面での管理を実現する唯一の方法です。

コラボレーション – 共創の必要性

内部人材の育成に重点を置いているものの、外部との緊密なパートナーシップがデジタル革新の実現につながるという認識も高まっています。回答した企業の意思決定者の過半数(63%)は、既に共創でデジタル・プロジェクトを遂行しています。その多くは、テクノロジー・サプライヤーとのコラボレーションですが、30%の企業が、業界の競合とも協力すると述べました。この傾向は将来増加するとみられています。しかし、企業がデジタル革新プロジェクトにもう少し辛抱強く取り組むべきだと示す兆候も現れています。回答者の73%は、迅速に成果を提供できなかったパートナーシップは解除すると述べているからです。事実、共創プロジェクトの成熟には一定の時間が必要なため、もう少し長期的な視点を持つことで企業もメリットを得られるかもしれません。

テクノロジー – 競争のための変化

デジタル技術を進化させた事業はあらゆるレベルにおいて、既存の産業を迅速、かつ根本的に破壊できる新たなビジネス・モデルを実現できることが広く知られています。事実、回答者の84%が、デジタルに出資するためには自社のビジネス・モデルやプロセスを積極的に変えると答えています。しかし、より短期的な優先事項として、半数以上が今後12ヶ月にサイバー・セキュリティ・テクノロジー(52%)やIoT(51%)に投資する計画です。テクノロジーの変化を積極的に受け入れる姿勢はあるものの、約4分の3(71%)がその変化を効果的に受け入れるか懸念しています。さらに多くの企業(76%)が、10年後にどこから競合が参入してくるか把握するのは不可能だと考えています。したがって、企業はお客様の将来のニーズや、台頭してくるテクノロジーがニーズをどのように満たしてくれるかを競合よりも先に把握し、一歩先を歩み続ける必要性があるのです。

デジタルの必須事項

人材、アクション、コラボレーション、そしてテクノロジーの4つ全ての側面を連携させることが、デジタル革新の成功の鍵になります。富士通の取締役執行役員専務のダンカン・テイトが本調査の前書きで述べた通り、「簡単な修正策や近道はない」のです。戦略的なアプローチと努力、忍耐が求められます。「デジタルは、可能性の世界を広げてくれますが、そのインパクトはすぐに感じられないことが多いのです。長期的な成功をおさめるようにデジタルを導入し、再評価し、そしてデジタルの再計画をしていくのは企業の能力です」とテイトは述べています。