Image; Rex Features

みずほ銀行:
次世代デジタル・バンキングの共創

2017年11月

株式会社みずほフィナンシャルグループ 常務執行役員 CDIOの山田大介氏が、事業全体に革新的変化をもたらすために、新規・既存のテクノロジー・パートナーに何を期待するのかについて語ります。

ブロックチェーンやAI、クラウド、ビッグデータなどのテクノロジーにより、金融業界でも新たなビジネス・モデルが台頭し、長い歴史を持つ銀行への脅威となりつつあります。みずほフィナンシャルグループ 常務執行役員 兼 株式会社みずほ銀行 常務執行役員 山田大介氏は、既存の銀行業界はデジタル・ディスラプション(デジタルの創造的破壊)を単発の事象としてではなく、既に世の中に広く浸透している動きであり、持続的なイノベーションを考える上で、避けることのできないものとして対応する必要がある、と述べています。

これは脅威なのか、それとも機会なのか。私の答えはどちらでもありません。Fintech(フィンテック)は技術発展の自然な成り行きの結果であり、人が自然と馬から馬車へ、そして自動車へと乗り換えたことと同様です。お客様は、オンライン・バンキングやモバイル決済など新技術の利便性をこれまで享受してきたのと同様に、金融業界で速いペースで起き得る今後のイノベーションに期待しています。

株式会社みずほフィナンシャルグループ 常務執行役員 兼
株式会社みずほ銀行 常務執行役員
山田大介氏
しかし、山田氏は、単なるリテール・バンキングに留まらず、幅広い分野におけるデジタルの適用を見据えています。クラウド・ファンディングやソーシャル・レンディングのほか、ブロックチェーンをベースとした金融取引やお客様IDの生体認証、マイクロファイナンス(小口金融)、デジタルマネー、Agritech(アグリテック)、さらには銀行業務の自動化などの可能性も模索するかもしれません。不可能なことはないのです。

こうした目標の達成に向けて、金融界の巨人は次々と共同事業やパートナーシップの推進を計画しています。6月には、シリコンバレーのベンチャー・キャピタルであるワールド・イノベーション・ラボ(WiL)との共同事業として、株式会社Blue Labを立ち上げました。山田氏は同社の代表取締役社長を務めています。創立発表で示されたミッションは、幅広い分野をカバーし、かつチャレンジングな内容となっております。「IoTを活用した次世代のビジネス・モデルの創造と事業化を進めていきます。例えば、グローバル決済プラットフォームの構築、AIやビックデータ を活用した事務作業自動化ソフトウェアの開発、先端IoT技術やブロックチェーン技術の商用化によるサプライチェーン・マネジメントと貿易金融の最適化等を進めていきます」。

「新規ベンチャーでは、失敗は成功のもとです。
より柔軟に、かつクリエイティブになれるのです。」

みずほ銀行では、Blue Labを別法人として運営し、起業家精神に基づき、実験を繰り返すアプローチを実践しようとしています。この方法で、より柔軟に、かつクリエイティブになれるのです。みずほ銀行のようなメガバンクでは、一つのミスが大規模な損失をもたらす可能性がありますが、こうした新規ベンチャーでは、失敗は成功のもとになるのです。

みずほ銀行では、グローバルICT企業である富士通を含む、既存の戦略テクノロジー・パートナーも巻き込むことで、この事業を推進する予定です。山田氏は、富士通とのコラボレーションにより以下の効果を期待しています。

ブロックチェーンを活用した新たな金融決済手法
生体情報によるオンライン認証
会計処理の自動化
拡張現実(AR)による顧客体験の向上

境界を越えるフィンテック

山田氏は、輸出入金融のクロスボーダー取引など、多くの労働集約型プロセスの代替手段として、各種業界でのブロックチェーン技術(経済取引の分散型デジタル台帳)の可能性に期待しています。例えば、ブラジルの会社が日本の商社にコーヒー豆を売るとします。コーヒー豆はまず、輸送会社によって日本に出荷されます。輸送時には、日本の保険会社の保険がかけられ、銀行が取引処理を開始します。そして、全ての書類が揃ったら、銀行が最終的に取引を許可します。現在の手続きでは書類が多すぎて、非常に複雑になっていますが、ブロックチェーンであれば、一回で取引が完了します。20日間かかっている取引を、わずか1日で完了できる可能性があるのです。

山田氏はまた、オンライン取引のセキュリティ強化のため、金融アプリケーションにおける生体認証の導入が進むと考えています。特に、目と顔の認証技術です。セキュリティが強化されれば、複雑な高額取引も安全かつ迅速に完了できます。さらに、ビッグデータからの情報と組み合わせれば、金融機関も消費者も、高度な取引をモバイル端末から行うことが可能になります。

「型を打ち破り、デジタル・ディスラプションの
新たな世界を発見する時なのです。」

直近では、Blue Labは宿泊サービス事業のAirbnbと提携し、清掃代行からイベントへの参加支援などあらゆる高品質な追加サービスを日本の民泊利用者向けに提供しています。それと同時に、みずほでは、国内の不動産オーナーやサービス事業者に様々な金融パッケージを提供する予定です。

Fintechがもたらすスケールや変化のスピードは、銀行の保守的な性質とうまく調和しないようにも見えます、と山田氏。しかし、金融業界の変革から逃れることはできないですし、むしろ変化を受け入れなければならない、と語ります。数十年使ってきたレガシー・システムがあります。こうした古いシステムやプロセスに別れを告げることは辛いですが、Fintechを銀行の日々の事業に適用したいのであれば、こうしたシステムやプロセスを調整し、新たな技術に合わせるか、全く新しいシステムやプロセスに置き換えなければなりません。果たして、それをするだけの勇気を私たちは持っているのでしょうか。

ディスラプティブな変化が近付いてきています。遠い先のことではなく、もうすぐ来ます、と山田氏は語ります。みずほ銀行が、新旧のテクノロジー・パートナーと提携し、トレンドを正確に読み取ろうとしていることが、その証です。

全ての人々が、実質的には高性能コンピューターと言えるスマートフォンをポケットに入れて持ち運ぶ現代は、Fintechのインフラや、金融業界が新技術を導入する環境が既に整っているといえます。このようなインフラが、新しい道を切り拓いていきます。銀行にとっては、型を打ち破り、新たな世界を発見する時なのです。

• 本記事は、富士通フォーラム2017東京での山田大介氏による特別講演「デジタルトランスフォーメーション時代の『みずほ』の次世代金融サービス創出への取り組み」を元に作成しています。