Digital Co-creation: デジタル革新における最優先事項

2017年5月

テクノロジーにおける戦略的なパートナーシップが、いかにデジタル革新の成功にとって不可欠かを理解する機会として、ICT企業の役員の方々やお客様は、富士通が年1回東京で開催するフォーラムを活用しています。

デジタル技術の進化は、企業とITサプライヤー間に新たな関係の構築を促しています。AIやビッグデータ分析、IoTなどの先進技術によって、新たなビジネス・モデル、製品およびサービスが生み出される一方で、経営者は企業の将来の成功の鍵は、自社の事業のビジョンを、信頼できるデジタル・パートナーの知見と組み合わせることにあると気付き始めています。

こうした経営における新たなマインドセット(意識)は、5月に東京で開催された富士通フォーラム2017でも顕著に表れていました。多国籍企業、中堅企業、官公庁、さらにはスタートアップ企業などの多くの経営者たちが、IT企業を一取引先と捉えていた今までの考え方はもはや古く、昨今の急速にデジタル化する世界では価値がなく、通用しない考え方であると明言していました。

富士通株式会社 代表取締役社長である田中 達也による基調講演、その他カンファレンス、および展示会場のデモを通じて、来場した2万名の参加者は、ビジネスとITによる新しい時代のCo-creation(共創)が、既に業界に変化を及ぼすような成果をもたらしていることを目撃しました。

実行されつつあるCo-creation

田中社長は、このイベントで紹介された10件の共創パートナーシップの事例の中から、富士通が農業にデジタル革新をもたらせた成功事例を最初に取り上げました。静岡県磐田市において、富士通は種苗メーカーの株式会社増田採種場様、および金融サービス・グループのオリックス株式会社様と共同で、磐田市の直接支援の下、株式会社スマート・アグリカルチャー磐田(SAC IWATA)を立ち上げました。

SAC IWATAの代表取締役 須藤 毅氏は、食と農業のバリューチェーン全体(苗木から生産、処理、出荷および販売)における新たなビジネス・モデルの共創に、富士通の農業用クラウドAkisaiと先端アナリティクス技術を活用した例を紹介しました。「2016年4月から野菜の安定生産と高い品質の確保にICTを活用しています。次のチャレンジとして、富士通のディープラーニング・プラットフォーム、Human Centric AI Zinraiを活用したスマート・アグリカルチャーに取り組むことを検討しています。」
増田採種場 専務取締役増田 秀美氏、富士通 代表取締役社長 田中 達也

増田採種場 専務取締役 増田 秀美氏も、こうしためざましい変化を強調しました。「SAC IWATAでは、新種の野菜や新しいビジネス・モデルを中核とした今までにない農業の産業化を検討しています。すでに種苗の専門家が新種のケールを開発しており、ICTにより早期安定生産、大規模生産、品種選定を実現し、有効なノウハウを共有することを計画しています。」

デジタル・エコシステムの拡大

富士通の共創の取り組みは、業界内のパートナーシップ形成にも広がっています。田中は次のように述べています。「市場は非常に複雑化しており、もはや一社だけで市場全体のメリットを享受することは不可能です。つまり、企業、業界団体、学術および政府系機関などとのコラボレーションを行い、エコシステムを拡大していく必要があります。」

さらに田中は、AIの分野では、Human Centric AI Zinraiを中心とした自社のR&Dを積極的に推進すると述べた上で、AIのスタートアップ企業やその他の専門家との連携も進めていくと語りました。「主要な技術パートナー様と深い信頼関係を築き、一緒にイノベーションを起こしたい」と述べました。

AIはより身近に

AIは確実に、この2日間のイベントの中で最も注目を集めたテーマでした。田中は次のように述べました。「AI技術の応用は、私たちを取り巻く世界、そしてICTシステムをめざましく変化させるでしょう。もはやシステムの自動化といった話ではなく、テクノロジーやサービスがAIから生まれるということです。」展示会場では、Zinraiの機能を使った30以上のサービスがデモ形式で紹介されました。例えば、AIが搭載された画像解析技術により、地下空洞の探査時間を90%短縮した川崎地質株式会社様の事例や、大量のトランザクションデータからAIを活用してエラーを判別している野村証券株式会社様の事例などがあげられます。また、富士通は研究機関である理化学研究所と共に、高性能な専用AIプロセッサ、ディープラーニング解析システムを開発し、来年提供開始予定です。富士通は自社の事業でも、コールセンターから製造、セキュリティ・オペレーションと多岐にわたる分野で40件以上のAIプロジェクトを展開しています。

数年以内にAIの普及が始まるだろう、と田中は考えています。「私たちの行動全てにAIが自然に取り入れられ、持ち物全てに組み込まれるでしょう。」と述べています。

そして、AIの適用で否応なしに一部の業務が自動化される一方で、多くの人が共通に享受するAIのメリットの方がより大きいだろう、と述べました。「現在、人が行なっている業務がAIによって置き換えられることはないと考えるほど、私は楽観的ではありません。しかし、人間に本来備わっている能力によって、AIの高度化とともに人類も進化すると確信しています。」

変革における課題

こうした激動が目の前に広がる中、ビジネス・リーダーたちがデジタル革新に意識を向けていることは驚くべきことではありません。富士通 執行役員常務 阪井 洋之CMOは、基調講演で15カ国を対象に最近実施した調査の結果について述べました。68%の企業がデジタル革新プログラムを現在導入中、または試行中、検討中とのことです。テクノロジー・ベンダーと組む場合、パートナーが自社の事業や業界を理解しているかを重要視しており(44%)、そのあとに、IoTやAIなどの専門知識(37%)、連携プロジェクトの実績(37%)などが続きました。
富士通 執行役員常務CMO 阪井 洋之

富士通の技術力を支えるのは、デジタル・ビジネス・プラットフォームMetaArcです。IoTやAI、PaaS、モバイルなどを活用し、基幹システムのクラウドへの移行を支援するとともに、企業のデジタル革新を可能にする新規アプリケーションの構築を迅速に行っていきます、と阪井は述べました。MetaArcはすでに日本およびヨーロッパ各地でも利用されており、今年度中にシンガポール、オーストラリアおよび米国での展開も予定しています。

岐路に立つ部門

富士通フォーラムでは、金融系の技術にもスポットライトが当てられました。デジタル革新時代における次世代ビジネス創出の課題について、株式会社みずほフィナンシャルグループ 常務執行役員 兼 株式会社みずほ銀行 常務執行役員 山田 大介氏は金融ITサービスの同胞に向けて警告を送りました。「『フィンテック(FinTech)』という言葉の幸福感は薄れたかもしれないが、クラウドやビッグデータなどの要素技術が可能にする新たな金融サービス・ビジネスモデルの出現は、業界の従来のプレイヤーにとっては破壊的です」と語りました。

「これは脅威なのか、それとも機会なのか。私の答えはどちらでもないです」と山田氏は富士通フォーラムの参加者たちに語りました。「フィンテックは技術発展の自然な成り行きの結果であり、人が自然と馬から馬車へ、そして自動車へと乗り換えたことと同様です。ユーザーは単に新技術の利便性を自然と受け入れているだけです。」

破壊的イノベーションに対するみずほ銀行の施策として、山田氏は4月にチーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー(CDIO)に任命されました。しかし、彼の次世代ビジネス・モデルの創出というミッションは、フィンテックに限定したものではありません。IoTなど技術的に影響力の高い分野も含んでいます。金融業界の巨人は、新たな共同事業の促進を計画しています。これから数ヶ月で、保険会社、商社、そして地方銀行と手を携え、銀行業務とは別の事業を作り出す予定です。「このやり方で、より柔軟に、かつクリエイティブになれる」と山田氏は語ります。

そうした道筋の中で、同社はクラウド・ファンディングやソーシャル・レンディング、ブロックチェーンをベースとした金融取引、(お客様IDの)生体認証、マイクロファイナンス、デジタルマネーなどの分野にも取り組んでいます。「不可能なことはありません。型を打ち破り、新たな世界を発見する時なのです。」と山田氏は語ります。富士通はみずほ銀行と共に、ブロックチェーン技術の応用によるクロスボーダー証券取引の検証時間短縮に挑んできました。その結果、従来は決済まで3日かかっていた取引が、1日で完了できるようになりました。

変革のビジョン

事実、ブロックチェーン技術は、ビジネスと社会に最も重大なインパクトをもたらすものの一つになる、とドン・タプスコット氏は特別講演で述べました。ベストセラー作家、そして戦略家、経営学の教授でもあるタプスコット氏は、いかに多くのデジタル技術が産業の時代からの変革を促しているかを語りました。「現在、銀行やメディア、教育機関、自動車メーカーなどの企業が果たす役割について、全く新たな考え方を可能にする大きな技術的発展がいくつか存在しています。これら全ての業界が、失速、さらには衰退に向けた様々な段階に位置しています。」

「第4次産業革命では、これらの企業は将来の共創や共同イノベーションを中心に自らを再構築する必要があります。通念を覆すかもしれませんが、顧客中心型ではだめなのです。お客様と共創する必要があるのです。お客様を巻き込んで、全く違う未来を構築するのです。」

「技術があらゆるもの、あらゆる人に浸透し、現実世界の一部となり、私たちの体にまで入ってきて、現実が仮想となり、ロボットが人間のようになる第4次産業革命に入ろうとしています。」
タプスコット・グループCEO ドン・タプスコット氏

タプスコット氏は、しかし、こうした新時代に基盤となりうる特出した技術がもう一つあると語っています。それは暗号通貨の基盤技術であるブロックチェーンです。「ブロックチェーンはまさに、第二のインターネットと言えます。情報のインターネットから価値のインターネットへと移行しているのです。」

タプスコット氏は続けます。「過去40年間、世界は情報を表示し移動させる仕組み(インターネット)を使ってきました。しかし、経済でより重要なのは、金銭や株式、契約、IP、芸術、音楽、投票権などの資産を保全し、移動させる仕組みです。しかしながら、それらの信頼性や効率性はあまり高くありません。こうした資産の移動に信頼性を持たせるために、これまでは取引のブローカーとして第三者機関を利用してきました。ブロックチェーンの分散型台帳の仕組みにより、こうした中間業者が不要となります。「情報だけでなく、価値のあるものを交換、売買、そして管理したり、peer-to-peerのビジネスを行えるまで、人と組織が人類の歴史上初めてお互いを信頼できるようになるのです(詳細は、ドン・タプスコット氏のインタビュー記事をご覧ください)。

その結果、ブロックチェーンなどの技術が共創を可能にし、支えるようになるのです。「ブロックチェーンは従来の取引コストを大幅に削減し、企業の深い構造に大きな変化をもたらします。共創というアイディアは単なるスローガンではありません。分散型の価値創造という新しいモデルに移行しようとしているのです。そこでは、現在の境界線の外にいる人たちとも、グローバルに分散された資産を使い価値を共創できるのです。」