2017年世界のトップ経営思想家

2017年11月

2年に一度行われるThinkers50では、リーダーシップ、戦略、イノベーション、デジタルのインパクトの分野において、世界で最も影響力を持つ経営思想家がランキングされます。

ビジネススクールのロジャー・マーティン教授が、世界で最も影響力のある経営思想家に選出されました。最新のThinkers50でトップに選ばれた同教授は、経営責任者向けのアドバイザーでもあり、経営のベストプラクティスに関する著書を11冊出版しています。最近のThinkers50でランクインした、伝説のビジネス思想家であるマイケル・ポーター氏、クレイトン・クリステンセン氏、ピーター・ドラッカー氏、C.K.プラハラード氏らの歩んだ道へと続くことになります。

Thinkers50とは、ウェブサイトでの一般からの投票と、経営学専門家の精鋭チームが選出した候補者から選ばれた経営思想家上位50名のことです。なかでもマーティン教授は、長期にわたる経営思想への貢献で評価されています。教授は、P&Gやレゴ、その他多くの企業のCEOらが活用する「より効果的でクリエイティブな選択」を中核とする「統合思考(インテグレーティブ・シンキング)」を提唱しています。

受賞スピーチでマーティン教授は、「経営思想家コミュニティの一員であることを光栄に思います。我々は、より良い世界のために影響をもたらすことを一番に願っています」と強調しました。

Thinkers50ランキング以外に「経営思想界のオスカー」と言われる8つの賞が貢献分野ごとに発表されました。そのうち、富士通がスポンサーであるイノベーション賞は、イノベーションと成長に特化したコンサルティング会社Innosightのマネージング・パートナーであるスコット・アンソニー氏に授与されました。同氏の最新の共著は、既存企業の破壊への脅威対策に関する「Dual Transformation: How to Reposition Today’s Business While Creating the Future and Seeing What’s Next」です。

デジタル・シンキング賞は、テクノロジー・トレンドの草分け的存在であるドン・タプスコット氏とご子息のアレックス・タプスコット氏に授与されました(I-CIOのビッグ・シンカー・インタビュー・シリーズ、ドン・タプスコットを参照)。著書「The Blockchain Revolution(ブロックチェーン・レボリューション)」での啓蒙的な取り組みが称賛されたものです。タプスコット氏は、世界で2番目に影響力を持つ経営者にも選ばれています。その他、I-CIOビッグ・シンカー・インタビューに登場し今回のランキングで選出された方々は次の通りです。

リタ・マクグレイス氏(10)
リンダ・グラットン氏(29)

ここから、Thinkers50の経営思想家、上位6名を紹介します。

1
ロジャー・マーティン氏

Rotman School of Managementのthe Institute for Corporate Citizenship and the Martin Prosperity Institute部長であり元学長。「統合思考(インテグレーティブ・シンキング)」による問題解決能力を中心に研究を行っています。この思考は、GEやP&G、レゴなどのCEOらから見出されたものです。クリエイティブで事業拡大につながる能力に、2つの矛盾するモデルやアイディアを検討し、そこに各々で優れている部分に顧客、従業員、競合、能力、コスト構造、産業の進化、規制環境などの変動する要素を織り交ぜて生み出されます。近著「Creating Great Choices: A Leader’s Guide to Integrative Thinking」においても中心となる考え方で、マルコム・グラッドウェル氏(米雑誌「ニューヨーカー」の記者兼作家)は、「意思決定者に、何をではなくどのように考えるかを教える、まれにない経営書」と評しています。教授の他の著書には、企業の社会的役割(Getting Beyond Better: How Social Entrepreneurship Works)や中核的な事業戦略(P&Gの会長であるアラン・ラフリー氏との共著、「Playing to Win: How Strategy Really Works(P&G式「勝つために戦う」戦略)」)などがあります。結果の妥当性を測定する手法として、マーティン教授の指導は、世界の経営陣や政府、そしてMBAの学生から高く評価されています。
Follow at: @RogerLMartin

2
ドン・タプスコット氏

ブラウザが登場する前の1990年代から現在まで、タプスコット氏の著作のタイトルが全てを語っています。「Paradigm Shift(情報技術革命とリエンジニアリング)」、「The Digital Economy(デジタル・エコノミー)」、「Growing Up Digital(デジタルネイティブが世界を変える)」、「Macrowikinomics(マイクロウィキノミクス)」、「The Blockchain Revolution」など、多くの人がさざ波を感じる遥か前から、一貫して様々なデジタルの波の可能性を示してきた戦略的思考家です。タプスコット氏は、Thinkers50デジタル・シンキング賞を2017年に受賞しました。元投資銀行家であるご子息、アレックス氏とのブロックチェーンに関する共著が称えられたものです。この本では、ビットコインを支える技術が「金融、ビジネス、ヘルスケア、教育、そしてガバナンスの繁栄となる次の時代」をどのように形成するかを模索しています。
Follow at: @dtapscott

3
クレイトン・クリステンセン氏

「The Innovator’s Dilemma(イノベーションのジレンマ)」がビジネスリーダーらのイノベーションに対する見方を一新してから20年経った今も、ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授は世界中の管理職の方々に強い影響を与え続けています。また、2013年と2011年のThinkers50で一位に選出されています。最新の共著、「Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice(ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム)」は、”顧客(人口動態、購買習慣など)に対する理解なくして事業の成功なし”という経営学の原理に反論する主張を展開しています。顧客が考えている仕事は何か、顧客がその仕事を成し遂げるために「採用したい」と考える商品やサービスは何だろうか、ということを理解する必要があるとの反対意見です。その例として挙げているのが、UberやAirbnb、Intuitなどです。
Follow at: @claychristensen

4
W・チャン・キム氏、レネ・モボルニュ氏

2005年に360万部売れた「Blue Ocean Strategy(ブルー・オーシャン戦略)」の生みの親であり、ともに仏INSEADビジネス・スクールの教授でもあります。Blue Ocean Strategy Instituteの共同理事を務める両氏は、未知の領域において企業をナビゲートする専門家です。2017年に両氏は、待ちに待った続編となる「Blue Ocean Shift: Proven Steps to Inspire Confidence and Seize New Growth」を出版しました。過密で確立された競争環境から、新たな開けた平野へのシフトを望む組織に向け、一歩ずつ戦略策定を指南しています。
Follow at: @BlueOceanStrtgy

5
マイケル・ポーター氏

「競争戦略のゴッドファーザー」であるマイケル・ポーター氏。Thinkers50ランキングが2001年に初めて開催されて以来変わらず、常に上位10位に名を連ねています。ハーバード・ビジネススクールで長きにわたり教鞭を執り、最大の課題を抱える企業や国家、社会に経済理論と戦略の概念を適用してきました。課題は、市場競争や企業戦略、経済開発、国家能力、環境やヘルスケアにわたっています。直近では、ほぼ全ての組織での今後の戦略において、AR(拡張現実)が果たす大きな役割について研究しています。
Follow at: @MichaelEPorter

6
マーシャル・ゴールドスミス氏

2015年のThinkers50でリーダーシップ賞を受賞しています。自身の仏教を通じた考えにより、冷淡なCEOたちを「より良い人々」に変えることで知られています。「What Got You Here Won’t Get You There(コーチングの神様が教える「できる」人の法則)」や「Triggers: Creating Behavior That Lasts(トリガー 自分を変えるコーチングの極意)」など30冊以上の経営に関する著書があり、エクゼクティブ向けスーパーコーチでもあります。最新の共著「Lifestorming: Creating Meaning and Achievement in Your Career and Life」では、「生活、友人、振る舞い、信念をデザインし直すことで、1日ずつゴールに近づき、なりたい自分になるため」の実践的ガイドを提供し、今まで以上の明るい未来への展望を開くことを約束しています。
Follow at: @coachgoldsmith