Photography: Scott Woodward

シンガポールが、世界をリードするスマート・シティとなるために

2017年2月

シンガポール・マネジメント大学(SMU)学長 アーノアッド・デ・マイヤー教授は、市民の生活とビジネス環境を向上させるために、都市国家がどのようにテクノロジー主導型モデルを展開しているのかを明らかにしました。

都市部は、人口過密で、汚染され、住むには健康的ではない場所と低く評価されています。しかし、このような見解は、都市のより広範なダイナミクス(力学)と、多くの都市が向かおうとしている方向性を無視したものになっています。環境の観点から見ると、都市に住む人の方が、地方に住む人よりも環境に与える影響は少ないのです。都市に住む人たちの方が、自動車にはあまり乗らずに公共交通機関を活用し、住居や医療、エネルギーなどの貴重な資源をより効率的に使っています。

近い将来、都市に適用されるデジタル技術は、現在の都市に対するネガティブな固定観念を払拭させる鍵になるでしょう。この分野に大きな可能性があると確信しています。スマート・シティ技術でこの問題に対処できれば、非常に健康的で、快適な居住環境を作り出せます。

「スマート・シティでは、人々がつながらない瞬間を求めるようになることを認識しておかなければなりません。」

楽観的でいるのには十分な理由があります。SMUでは2014年から、グローバルICT企業である富士通と、UNiCENプロジェクトに取り組んでいます。これは、コンピュータの知能を活用して、都市環境における人やインフラ、資源の流れや管理を最適化する方法を見い出していく5年に渡るプロジェクトです。

SMUのチームは、都市のモビリティを改善するための複雑なモデルを構築・評価する役割を担っています。私たちは、理論、モデル、数学、そして概念的なアイデアを提供します。そして、交通当局やショッピングモール、その他の情報源からのデータを活用し、ソリューションを導き出します。一方で、富士通がデータ分析を実行するコンピューティング能力の全てを提供してくれます。この両者の組み合わせは、非常に強力なパートナーシップになっています。

UNiCENプロジェクトが、シンガポールに与えるメリットについて、車載GPSシステムからのリアルタイムな運行データと電子通行料徴収システムを組み合わせて、交通量や車両の走行ルートを詳細に分析する事例を用いて紹介しましょう。例えば、センサーを活用して、特定の道路の交通量を把握できれば、一方の道で交通量が多い場合に、信号が変わる頻度を調整することができます。また、信号システムが車と連携することで、車が自動的に停止することも可能になります。私は、信号が青から赤に変わることを自分の車が検知し、スピードを緩め、停止してくれる方がより好ましいと思います。

スマート・シティにおけるIoTの役割

スマート・シティ技術には、コアとなる要素が4つあります。交通量や汚染、人の移動、温度変化などを確認するためのセンサー、インターネットに接続したデバイスからリアルタイムに流れ込む大量のデータ、これらのデータから意味を読み取る強力なシステム、そして行動に移す能力です。

こうした要素を組み合わせることで、都市の生活を大幅に向上させる可能性が生まれる一方、注意も必要です。データのプライバシーは、検討しなければならない重要な課題です。多くの場合、人々はサービスの改善と引き換えに自分のプライベートなデータを一部提供することがあります。しかし、プライバシーを求める場面も依然としてあります。スマート・シティでは、人々がつながらない瞬間を求めるようになることを認識しておかなければならないのです。

「環境の観点から見ると、都市に住む人の方が、田舎に住む人よりも環境に与える影響は少ないのです。」

シンガポールは既に、世界をリードするスマート・シティの1つです。特に、交通管理において世界をリードしています。例えば、道路の車両数を制限するためのトラフィック・コントロール・システムを運用しています。これは、電子通行料徴収システムによって1日の間で料金を変動させることによって、渋滞を管理しています。

将来の予測

シンガポール政府はすでに、「スマート国家プログラム」を推進しています。アプリに個人の医療記録や、救急医療対応、信号故障などの街の整備関係の問題を報告できる機能を搭載し、市民の生活の改善を目指しています。UNiCENの取り組みは、理論的な研究とは異なります。私たちの活動は、実践型であることが強みです。既にソリューションの実証実験も行なっており、プロトタイプを開発して、それを富士通とパートナー各社が大規模な都市を管理する実際のサービスに発展させる予定です。

それほど遠くないシンガポールの将来像に関係して、以下の3つの実現を期待しています。まず、1つ目が自動運転です。馬車から車へとシフトした時、人間は全ての馬を処分したりせずに、むしろ、乗馬を娯楽として楽しむようになりました。車もそうなれるはずです。2つ目は、政府と市民から提供される全てのデータを使い、バーチャル版の都市を作ることです。

最後に、スマートなシンガポールが、住民のストレス・レベルを大幅に削減することを願っています。シンガポールは、とてもうまく計画された都市であるものの、想定外の事態が起こった際に、計画通りに常に対応できているわけではありません。データが増えれば、そのような状況にもリアルタイムに、よりうまく対応できるようになり、最終的にはより快適な都市を実現することができると考えています。