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人生100年時代:長寿が職場に与える影響

2018年4月

ロンドン・ビジネス・スクールの経営学教授であるリンダ・グラットン氏が、先進国に到来する「人生100年時代」が仕事に与える影響や、その多くを支えるテクノロジーについて語ります。

未来の職場環境をテーマとするITカンファレンスの多くは、メインテーマとして、ミレニアル世代やデジタル・ネイティブ世代が及ぼす影響について取り上げています。しかし、新しい世代の登場が働き方に影響を与えているのと同時に、年配の世代も、より長く経済活動に参加したいと望み、実際に参加するようになっています。平均寿命が延び、国民年金の支給開始も遅くなっていることが(少なくとも、恵まれた先進国では)その理由の一つと言えるでしょう。

100年、あるいは100年を超える人生において、その中で60年もの間フルタイムで働くことを想像した場合、ほとんどの人は悲観的な気持ちになるでしょう。しかし、ロンドン・ビジネス・スクールの経営学教授であるリンダ・グラットン氏は、高齢化が旧態依然の雇用形態に驚くべき改善をもたらす、と述べています。

以前、東京で行われた富士通の役員との対談において、グラットン教授は次のように語っています。「人々が100歳まで、あるいは100歳を超えて生きるとき、人生は現行の3ステージからマルチステージへと変化するでしょう。フルタイムで教育を受けた後、途切れることなく働き(子育てによる一時的な中断を含む)、その後リタイヤ生活に入るというかたちではなく、人生のどこかに長期間仕事をしない期間を設けたり、長期有給休暇を取ったり、新たなスキルの習得や家族介護のためにパートタイムという働き方を選ぶ、といった、個人だけでなく社会にとってもより健全で、持続可能、そして魅力的なものへと変化するでしょう」。

当然、産業革命をルーツとして形成された働き方を変えることで、経済生産にマイナスの影響がでるのではないか、というビジネス上の懸念が発生します。しかし、それに対しグラットン教授は次のように述べています。「先進国では、長時間かつ一生懸命働いても生産性はそれほど向上していない、というパラドックスを抱えています。この問題は、人とスマートマシーンをバランス良く配置した新しい職場環境によって解決することができます。AIをヒューマンセントリックなテクノロジーとして実装すれば、高い生産性を実現する真のソリューションになりえるのです」。

そして、当然のことながら、当初は、AIが職場にもたらす影響について、人々から前向きな理解は得られませんでした。タクシードライバーや株式トレーダー、弁護士など、その職業にかかわらず、ほとんどの人はAIを週の労働時間や職業生活期間の短縮を可能にするチャンスとは考えず、AIのせいで未来の職場から自分たちの役割が排除されるのではないか、と考えていました。さらには、自分たちはより簡単な仕事へ格下げされてしまうのではないか、とも恐れていました。国民年金を頼りにする多くの人々の定年退職が70歳に引き上げられているにもかかわらず、です。

グラットン教授は、ここにテクノロジーが重要な役割を果たす必要性がある、と語ります。「リーダーたちは、未来の姿を示し、スキル開発をリードしなければなりません。数十万人の運送ドライバーが、自動運転機能により職を失う危機に直面しているとき、新たなスキルをどのように習得させれば良いのでしょうか。そこに、ヒューマンセントリックな企業という文化が重要になるのです。国や企業が将来を明確に伝えることができれば、人々の不安感を減らすことができるのです」。

企業の経営陣は、AIの影響を受けながら変化し続ける職場環境を導いていく責任がある、と教授は語ります。「成功を収めた企業が変わることは簡単ではありません。人は、別の生き方を想像したり、リーダーが変わっていく姿を見ることで変わるものです。したがって、リーダーの姿勢や働き方が、人々の想像力を解放する重要なカギとなるのです」。

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『LIFE SHIFT(ライフ・シフト―100年時代の人生戦略)』のほか、ベストセラーとなっている多くのビジネス書の著者。急速に進化する人と仕事の関係について幅広いコンサルティングを行うと共に、ユニリーバ社CEOのポール・ポールマン氏や、日本の安倍晋三首相が率いる人生100年時代構想会議に戦略的インプットを提供。