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富士通が見せる顧客との共創、その多彩な成果

2018年6月

デジタル革新を成功に導く鍵は、コラボレーションにあります。東京で毎年開催されるフォーラムで、グローバルICT企業がその重要性を強調しました。

デジタル革新の時代、ITベンダー、パートナー企業、大学、行政機関、スタートアップなどさまざまな協力者とのネットワーク形成がその重要性を増しており、企業の成功はそうしたネットワークをいかに生み出せるかということにかかっています。そうした共創ネットワークの支援こそが事業戦略の核であると富士通の代表取締役社長 田中達也は語りました。

「一社だけで成功をめざす時代は終わりました」。5月に東京で行われたフォーラムで、田中はそう話し、「わたしたちは、AIやIoTがライフスタイルやビジネスの在り方を変えていくデジタル革新の時代にあります。そこでは共創の流れが加速する一方です」と続けました。

それは、富士通が顧客企業と進めているデジタル革新プロジェクトや次世代技術開発にはっきりと現れています。たとえば、富士通フォーラム東京2018で、田中は、量子コンピューティングに着想を得たデジタル回路で、現在の汎用コンピューターでは解くことが難しい「組合せ最適化問題」を高速で解く新しい技術である、デジタルアニーラを紹介しました。この技術を用いることで、企業は従来型のコンピューターをはるかに凌ぐ処理能力を手に入れ、組合せ最適化問題に対処できるようになります。

デジタルアニーラは、富士通研究所、トロント大学、そして量子コンピューティング用ソフトウェアを開発する1QBit、というこの三者のコラボレーションによって生み出され、ダウデュポン社、RBS社、アリアンツ社などで実際に活用されています。これは富士通が考える共創モデルの好例といえるでしょう。

量子コンピューティングを加速すると目されるデジタルアニーラは、すでに国内でクラウドサービスとして提供されていますが、今年度中には北米、ヨーロッパ、アジアでも利用できるようになります。「量子コンピューターは次世代を担うコンピューティング技術」と田中は話します。「しかし、実用までは、まだ越えるべき難関があります」。たとえば、計算を行う量子ビットをどう作り、どう連結するか、あるいはシステムの温度をいかに絶対零度に保つか、といったことがその課題となっています。「とはいえ、それを利用できるまで、じっと待っているわけにはいきません。そこでわたしたちは、デジタル回路上で量子のふるまいを再現し、量子コンピューターのような計算を可能にするデジタルアニーラを開発しました」。

トロント大学と設計したアプリケーション限定型の集積回路、デジタルアニーリングユニット(DAU)を用いて、富士通は、佐々木繁CTOのいわく「世界で唯一、量子に着想を得たデジタルアニーラ」の開発を成し遂げました。デジタルアニーラは、従来のコンピューター上で動作し、創薬、投資ポートフォリオ、運輸経路、災害復旧計画、物流といった分野の最適化問題を高速に解くことができます。

富士通 執行役員 グローバルマーケティンググループ長 山田厳英

技術系ベンダーや顧客企業をはじめ、報道各社など18,000名が来場した富士通フォーラムでは、ほかにも共創の精神を伝える発表が数多くありました。富士通 グローバルマーケティンググループ長の山田厳英は、同社が大小さまざまな企業と協業して価値創出に取り組んでいることを、事例をもとに紹介しました。

韓国の金融サービス会社、ロッテカードは、富士通の協力のもと非接触型決済システムを導入しました。これにより同社ユーザーは富士通の「手のひら静脈認証(PalmSecure)」に手をかざすだけで購入した商品やサービスの決済が行えるようになります。生体認証には虹彩、指紋、顔認証などさまざまな選択肢がありますが、同社は、スピード、正確さ、手軽さ、衛生面での安全性などからこの手のひら静脈認証ソリューションを選択しました。ロッテカード社のペイメント事業チームを指揮するアン・ビュンイル氏は、もうひとつの選択の理由として、富士通が韓国の金融規制に精通していたことを挙げています。30店舗への初期導入の成功を踏まえ、韓国最大であるロッテグループの小売ネットワークは「HandPay決済サービス」を導入します。モバイル決済が主流を占める韓国で、このサービスは、従来のキャッシュレス、カードレス、デバイスベース決済からハンズフリー(手ぶら)決済への進化をもたらすだろうとアン・ビュンイル氏は見ています。

ロッテカード株式会社 マーケティング本部 DT事業部門 ペイメント事業チーム マネージャー アン・ビュンイル氏

GUMブランドで知られる日本の国内オーラルケア用品メーカー、サンスターは昨年、富士通や日吉歯科診療所とともに、歯科診療所と通院患者を対象にしたクラウドサービスを立ち上げました。センサー付きIoT歯ブラシ「GUM PLAY」のユーザーは、自身の磨き方や口内衛生に関する情報をスマートフォン経由でクラウドに送り、歯科医と共有することができます。口内衛生の改善や歯周病予防のために独自の採点システムを盛り込んだほか、退屈な歯磨きにゲームの要素も採り入れたとサンスターのアジア/日本エリア マーケティング統括部長、淡島史浩氏は話しています。富士通のクラウドサービスでは、ユーザーの個人データのほか、レントゲン写真、口腔内写真、歯周病検査、参考資料といった各種データを保管することができます。

サンスターグループ オーラルケア カンパニー
アジア/日本エリア マーケティング統括部長 淡島史浩氏


競争が激しい国内電力業界において、関西電力(KEPCO)は「お客さまから選ばれる存在」となるため高付加価値サービスの提供に取り組んでいます。その一環として同社は、スマートメーターの検針データ(クラウド上に保存)を富士通のAIを活用して分析、世帯ごとの消費傾向を割り出し、それぞれの電力ニーズに応えようとしています。たとえば『生活リズムお知らせサービス』は、独り住まいの高齢者を対象にその電力消費状況をモニターし、暖房の故障やテレビのつけっぱなしといった異常を検知、家族や介護支援者にそれを通知します。また、AIのアルゴリズムを用いることで電力の最適な需給調整も行うことができます。

AIを自動化に活かした事例もあります。富士通は、シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジーとともに、年間5,000枚製造される風力タービンの羽根(全長75メートル)の効率的な品質検査システムを開発しました。作動中のブレードの破損は大事故にもつながりかねません。そこで従来この品質検査は、熟練した技術者が超音波画像診断に最大6時間をかけ、一枚一枚丁寧に行ってきました。富士通はマシンラーニング技術を用いて高解像度画像中に含まれる異常をAIが自動検知するシステムを開発し、100%の不良検知率、品質検査時間の80%短縮、という大きな成果を挙げました。

デジタル・マッスル

「こうしたプロジェクトの成功にはいくつかの共通点がある」と山田は話します。今年2月に、富士通は世界の経営層や意思決定者約1,500人を対象にデジタル革新に関するグローバル調査を実施しましたが、その結果、デジタル革新プロジェクトの成功要因には以下の6つがあることがわかりました。

・経営層の強力なリーダーシップ
・従業員の高い質とスキル(人材)
・緊急の難題に対処する俊敏性
・従来システムとデジタル技術を融合する力
・共創のエコシステムを育てる力
・蓄積されたデータから価値を創出する力

こうした特徴は、企業における「デジタル・マッスル」ともいえると山田は話します。大会出場に向け筋力をつけていくアスリートのように、企業もまたデジタル革新に備えてこれらの「筋力」をつけていかなければなりません。

実際、純粋なネット企業を除き、大半の企業はすでにそうした努力を始めています。前述の富士通のデジタル革新調査によれば、対象となった経営層の3分の2(67%)がデジタル革新の取り組みを「検討中」「トライアル中」または「実行中」と答えています。そしてまた「デジタル革新により具体的なビジネスの成果が出た」と答えた経営者の数は全体の24%に上りました。

この数字はこれからも増え続けるだろう、と山田は予想します。「お客様と現在進めている共創の例を見ても、デジタル革新はもはや当たり前となっています」。

・富士通フォーラム2018のその他のスピーカー
– オープンイノベーションの父、ヘンリー・チェスブロウ教授
– 1QBit社CEO、アンドリュー・フルスマン氏
– 富士通株式会社 首席エバンジェリスト中山五輪男