Photo of Duncan Tait, SEVP and head of Americas and EMEIA, Fujitsu, Photography: Enno Kapitza

富士通が「デジタル・ギャップの克服」に注力

2017年11月

グローバルICT企業の富士通は、ヨーロッパで毎年開催している富士通フォーラムで、最先端テクノロジーや、お客様をデジタル革新を成功に導く共創の取り組みについて紹介しました。

「デジタル・ディスラプションは21世紀の確固たるテーマになりつつあります。現在のペースで進めば、2025年までには、グローバルな事業収益の30%が新規のプレイヤーに再分配されることになります」

富士通の取締役執行役員専務、EMEIAリージョン長兼Americasリージョン長であるダンカン・テイトが11月にミュンヘンで開催されたフォーラムで12,000人の参加者に向けて語りました。そのようなディスラプションに対する課題は、組織の境界を越えて投げかけられ、企業、政府、そして社会全体で調和のとれた対応が求められるのです。

テイトは、富士通が世界のビジネス界の意思決定者1,625人に対して実施した調査をもとに、デジタル革新を成功させようと苦しみ、財政的にも痛手を負う企業の様子を語りました。調査対象の企業の約90%は、イノベーションの文化が社内にあると信じているものの、3分の1が過去2年の間にデジタル革新プロジェクトを中止したことがあり、その費用は平均で50万ユーロ(60万ドル)にのぼっています。「企業は失敗する恐怖感を覚え、社内のスキル不足に頭を抱えています。デジタル化のスキルが欠如しており、戦略と実行にギャップがある場合には、共創が必須です」とテイトは語っています。



進むべき道は、テクノロジー・パートナーのエコシステムを持ち、規模の大きい、富士通などの実績があるパートナーと一緒に共創を行うことです。それにより、お客様のギャップを埋めることができるとテイトは語ります。

共創の事例

テイトは続けて実際の共創成功事例を紹介しました。シーメンス・ガメサ社(Siemens Gamesa Renewable Energy, S.A. 本社:スペイン ビスカヤ、CEO:Markus Tacke)と共に、風力タービンの羽根の製造品質管理を改善するAIツールを開発した事例です。これは、画像処理とディープ・ラーニングにより、稼働時にブレードの障害につながる可能性がある製造上の欠陥をパターンとして特定できるソリューションです。このアプローチにより、ブレードの検査時間を6時間から、わずか1時間半に短縮できました。

医療分野では、看護スタッフが患者のバイタルサインを継続的に監視できるセンサーをオランダのスリンゲランド病院と開発しています。患者に装着するセンサーを2台に減らして、ベッド周辺にセンサーを配置したソリューションを共同開発しました。同院の詳細なヘルスケア・モニタリングの要件を利用し、富士通のIoTにおける経験を生かしたものです。同時に、心拍、血圧、呼吸数、その他の医療データを24時間365日監視でき、患者が病院内のどこにいても追跡できるようになりました。その結果、看護師らは日々の検査に追われることなく、看護や治療に時間を取れるようになりました。スリングランド病院のクリット・ヴァン・エウィジェクCEOは「このシステムのおかげで、看護師らはデータによる意思決定が行えるようになり、急を要する患者へのケアを優先できるようになりました。近い将来、患者の状態悪化の予測、早期の介入が可能になると想定しています」と語ります。

デジタル革新への投資

富士通は、お客様のデジタル革新への道のりをさらに支援すべく、クラウド、IoT、AI、そしてセキュリティという、デジタル革新の4つの核となるテクノロジーに大幅な投資を行っています。

Fujitsu Cloud Service K5のグローバル展開も進んでいます。すでに提供を開始している日本、イギリス、フィンランド、ドイツ、スペインに加え、米国でもクラウド・データセンターが開設され、シンガポールとオーストラリアでもまもなく展開予定です。お客様がクラウド・アプリケーションのテストをファストトラックで安全に実施できるK5 Playgroundも導入しました。

「Industry 4.0」対応のINTELLIDEGEのもテイトから発表されました。エッジコンピューティング処理機能を搭載しており、現場のオペレーション・テクノロジーとオンプレミス・クラウドIoTとのギャップを埋める新ソリューションです。

さらに富士通は、フランス政府と協力し、フランスにAI Center of Excellenceを開設しました。セキュリティ分野では、サイバー・エンジニアのチームを2,000名体制に増強し、24時間365日体制のセキュリティ・オペレーション・センター13ヶ所、イギリスおよびドイツの高度なサイバー脅威センターから世界のお客様をサポートしています。

新たな競争のダイナミクス

富士通フォーラムでデジタル革新に向けたより深い協業を訴えた人物は、テイトだけではありませんでした。ニューヨークのコロンビア・ビジネススクールのリタ・マクグレイス教授は、デジタル共創の成功には新たな戦略的フレームワークが必要だと、基調講演の参加者たちに呼びかけました。デジタル・ビジネス・モデルの台頭と、デジタルによって加速する変化のペースについて触れ、企業は持続可能な競合優位性を確立し、それに長年頼る生き方はもはやできない、とマクグレイス教授は強調しました。「長い間成功してきたからといって、ルールが変わらないとは限らないのです。今は、持続可能な競合優位性よりも、一過性の世界にいるのです」と警鐘を鳴らしました。



今、競合はどのような業界からでも参入してくる可能性があります。何故ならば、業界の境界線が曖昧になり、商品からサービスやエクスペリエンスへとシフトし始めている、昨今のお客様の需要を満たすためにエコシステムが形成されるからです。「これまでは、資産の所有が自分たちの競合優位性を守る方法だと考えてきました。しかし、今、音楽レコードや車などの資産を所有する必要がなくなっています。必要に応じて利用するだけです」とマクグレイス教授。

商品からサービスへのシフトから、ビジネスが把握しておくべき新たなネットワーク効果が生まれてきていると語ります。多くの顧客がある商品を所有しているからといって、ユーザー価値が高まるわけではありません。しかし、サービスの周辺にネットワークが構築されると、ユーザー価値が大きく増加するそうです。例えば、マッチングサイトは参加者が増えることでユーザーにとって価値のあるものになります。ビジネスでの独自の分野でこの効果を真似して、顧客がネットワークに参加できる価値のある環境を提供すれば、エコシステムが拡大し、サービスも急速に強化されます。

「競合他社に関してではなく、お客様のことにもっと意識を向けるべきです。競合の動きを記録し、次の手を心配するだけでも気が狂いそうになるでしょう。しかし、お客様の購買パターンを真に理解すれば、間違うことはないのです」とマクグレイス教授。

コラボレーションの構築

共創については、820億ノルウェー・クローネ(100億ドル)規模のアルミニウムと再生可能エネルギーを扱うグローバル企業のノルスク・ハイドロ社(Norsk Hydro 本社:ノルウェー オスロ、社長兼CEO:Svein Richard Brandtzaeg)のCIO、ジョー・デ・ヴリュジャー氏も考えていました。共創は革新のために必須ですが、その成功は社内ビジネスの文化を変化させられるかにかかっていると語ります。他社同様、ノルスク・ハイドロ社もデジタル革新は自社の人材だけで取り組むには、重要かつ複雑すぎる課題だと考えています。「サプライヤーとパートナーシップを組み、共に成果を得るプロセスで、社内の人材が安心できる方法が必要」と語っています。

包括的なIT刷新プログラムを通して、デジタル化の道のりの基盤を作ったノルスク・ハイドロ社は、テクノロジー・パートナー向けにいくつか大きな課題を掲げています。「さらに一歩進んで、『普通の』ICTの先を行き、富士通などの企業が今後、ロボティクスやプロセスのデジタル化で何を提供できるのか、疑問を呈したいのです。生産性を最適化する技術を使い、新たなサービスを作り、カーボンフットプリントを改善したいと考えています」と同社のデジタル戦略担当プログラム・マネージャーであるハンス・ピーター・オヤ氏は述べています。

量子コンピュータリングの未来

お客様がデジタル革新を実現する将来のテクノロジーを検討していることを受け、富士通の田中社長は、量子コンピューティング技術の影響を受けた新たなコンピューター・デザインを紹介しました。処理性能を一段と改善する技術です。「世界には、より高度なコンピューティング・パワーを必要とする問題がたくさんあります。だからこそ、新たなタイプのコンピューターが必要であり、量子コンピューティングはこうした問題に対応する有望な候補の一つになっています」

富士通のデジタルアニーラは、従来のデジタル回路に量子コンピューティングの影響を受けた演算機能を実装しています。このシステムでは、組み合わせ最適化問題として知られる大量のデータの組合せを処理できます。富士通研究所の佐々木社長は、数千万の化学化合物を分析することで創薬プロセスを加速する方法を例として紹介しました。これまで2週間かかっていた結果を1日以内に出すことができるのです。

デジタルアニーラは標準のデジタル技術を基盤にしているため、真の量子マシーンを構築、実行するという大きな課題を解決しながら、量子コンピューティングのような機能を提供できます。富士通研究所は、このテクノロジーを2018年上期には商用化し、化学、金融、エネルギー、流通など多様な分野への適用することを検討しています。

富士通EMEIAのCTO、ジョゼフ・レガーは、富士通フォーラムの基調講演にて、量子コンピューティングの潜在性を活用するとの方向性を示しました。「富士通デジタルアニーラを活用して、今できることをしています。量子ではありませんが、その影響を受けたテクノロジーです。そして、通常のコンピューターより17,000倍早く、エネルギー効率もとても高いのです」と語りました。



ムーアの法則に関連して2年で性能が倍増することを例に取り、富士通の新発見は14世代分のチップ、または30年分の開発時間に相当する、と語りました。「量子的なスピードアップへの一歩であり、量子コンピューティングが対応しているものとほぼ同じ問題の解決に役立つでしょう」とレガー。

しかし、量子テクノロジーのメリットは、劇的な性能改善にとどまらない、とレガーは述べました。「量子の状態はコピーできないため、完全にセキュアな通信チャネルを構築できるアプローチです。量子ITは、セキュアなネットワーク、セキュアなクラウド、量子でセキュリティを確保したインターネットの構築を可能にします。つまり、より安全な世界を作ることができるからこそ、非常に面白いのです」。

「量子コンピューティングがあるからこそ、将来はもっと明るいのです」真の量子コンピューターが、商業的に採算が取れるようになるには、あと7年から10年かかると予測しているものの、「一方で、富士通デジタルアニーラのようなテクノロジーによって、大きな飛躍をし、より安全で豊かな世界をあらゆる人のために構築できるようになるでしょう」。