写真: ステファン・ホブマイヤー

組織を超えてイノベーションを統合

2017年2月

企業は、急拡大し、市場に破壊的創造をもたらすデジタル技術や新たなビジネス・モデルに注目する一方で、こうした機会に対応できる主要なパートナーと連携する必要がある、とドイツポストDHLのサプライチェーン部門担当CIO兼COOマーカス・ヴォス氏は語ります。

デジタル革新がビジネスの議題のトップとして語られるようになり、あらゆる業界のITリーダーたちが組織内でテクノロジー主導のイノベーションを牽引するよう求められています。つまり、新しい機会を模索し、動きの早い新興の挑戦者の動きを阻止しなければなりません。従来型の企業の間では、今までとは全く異なるイノベーション・モデルが摸索されています。スタートアップ企業を買収したり、パートナーシップ関係を築いて、イノベーションハブを形成したり、あるいはテクノロジー・パートナーや顧客と共創関係を築く、といった動きです。

DHLサプライチェーンでは、常に市場に注目し、ビジネスの変革につながり、既存の強みを存分に活かせるデジタル技術やイノベーション・モデルに目を光らせています。

イノベーションやトレンドを調査する際は常に、我々にとって独自の優位性は何かを考え、それを最大限に活用しようとしています。他者よりも資産や、特定の専門性やデータを多く持って、独自の優位性を活かします。規模が重要であり、新技術を我々が活用するスピードも同じく重要です。

レーダー・スキャン

DHLでは、Logistics Trend Radar(ロジスティクス・トレンド・レーダー)を中心とする堅牢なプロセスを活用し、新興技術の可能性を評価しています。結果を2年に1回更新し、外部向けのウェブサイトでも公開しています。どの技術やビジネス・トレンドが物流部門に大きな影響を与える可能性があるのかについて、レーダー上にプロットしています。現在、レーダーで検知された今後5年の枠内に存在する新興技術は、拡張現実、ビッグデータ、クラウド・ロジスティクス、そしてロボティクスです。インパクトをもたらす可能性のあるビジネスや社会トレンドとしては、シェアリング・エコノミーやオムニチャネル、スマート・エネルギー・ロジスティクスなどが挙げられています。

DHLのトレンド・リサーチ・チームは、これらのトレンドを、DHLの他部署と共に深く掘り下げ、PoCを構築します。もし、その技術の有効性が高く、メリットをもたらすと判断された場合、そのPoCは迅速にスケールアップできるように作られます。しかし、こうした取り組みをDHL一社で行うことはほとんどありません。主要なテクノロジー・パートナーと共にソリューションを共創し、早期導入を促進しています。

最近の取り組みの一つが、ドライバーの居眠り対策です。DHLでは、グローバルICT企業である富士通と協力し、ドライバーのバイタルサインや反応レベルを監視するウェアラブル・デバイスを用いて、疲労の兆候を早期に検知する実証実験を行なっています。イヤホン形のデバイスが、ドライバーと担当のDHLコントロールセンターに対して、ドライバーに休息が必要であるという警告を発信します。この技術で、輸送時の安全の大幅な改善を目指しています。

こうした共創をロマンチックに表現すると、次のようになります。昔、冒険家たちは星座を道しるべとしていました。現在は、地図と情報があり、何が可能か不可能かを知ることができます。そして、そこに到達するために適切なパートナーと協力することができるのです。

破壊的モデル

これらのデジタル技術に関する取り組みは、新たな市場ダイナミクスへの対抗策ともいえます。物流分野を「ウーバー化」してくれるスタートアップ企業への投資がここ数年急増しています。

物流業界へのベンチャーキャピタル(VC)の流入を多く目にしてきました。2001年から2013年にかけて、世界のVCファンドの総額は年間わずか10億ドル程度でしたが、2015年には119億ドルにまで到達しました。

デジタル以前の時代では、物流は非常に退屈な業界とみなされていました。しかし、物流業界での新たなビジネス・モデルの創出に特化したスタートアップ企業への投資額は、毎年4倍に増えています。その動きは私たちにとって、イノベーションを起こし、頭脳やデータ、資産を駆使し、新たなテクノロジーの応用をさらに推し進めなければ、というプレッシャーになっているのです。

顧客と緊密に連携し、現場のイノベーションにも取り組んでいます。同時に、スタートアップ企業との共創の場を求め、業界の知識を蓄え、次の商品の波を作り出そうとしています。また、戦略的テクノロジー・パートナーとの共同事業にも投資し、イノベーションを共に起こしています。

このようなイノベーションの引き金となる動きは、ビジネスのどこからでも生まれ、さらにはその枠を超えたところからでも生まれる可能性があります。多くの場合、IT部門の人はある特定の技術をどう応用するかについて考えます。一方、弊社のビジネス部門や顧客、そしてパートナーは、新しい物事にも目を向けています。そういったところから出てきたアイデアが、私の部署に集められ、ビジネス部門と共にフィルターし、形作られていきます。そして、最適なタイミングのものはどれか、数年待つべきものはどれなのか、を検討するのですが、こうした動きは本当に目を見張るスピードで起こっているのです。