Image: Harry Borden

大きな社会問題に取り組む企業はいかにして成功するのか

2014年10月

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は、社会の共通善に取り組む企業は成長できると信じています。その取り組みに当たって、CIOには明確な役割があります。

現代の企業は、かつてないほど大きく、豊かで、パワフルであり、人の創造性や取り組みをこれまで以上に支えています。企業は、自社の成長や繁栄のためだけでなく、世界で深刻となっている社会問題や環境問題に取り組むために自社のコア・コンピタンスを活用するポジションにあります。

多くの「次世代」のビジネス・リーダーは、すでにこの考えに沿った行動を取っています。これは、大企業と社会との関係が根本的に変わったことを示唆しており、地球規模の大きな問題を解決するために企業ができることに対して、非常に大きな関心が向けられています。

かつては、企業の内部で起こっていることに焦点を当てていましたが、現在では、お客様、従業員、リーダーやその他のステークホルダーは、企業の外側で何が起きているのかをますます考えるようになっています。サプライチェーンのことだけではなく、コミュニティやより広い世界で何が起きているのかについて考えているのです。

つまり、気候変動やアフリカでの水不足、高齢化社会や若年層の失業者への対応ついて意見を持つリーダーが世界中にいるのです。グラットン教授自身は、ホット・スポット・ムーブメントの主催者であり、アカデミックな視点から組織が付加価値を生み出すことを支援するための調査、コンサルティング活動をロンドンをベースに進めています。

能力を活用する
グラットン教授の書籍”The Key”(邦題:未来企業)において、企業には、慢性的に続いているグローバル課題に影響を与えることができる三つの組織的能力があると述べられています。

• 革新と研究
オランダに拠点を置く栄養食品会社DSMは、国連のWFPとノウハウを共有して、栄養失調の問題に取り組んでいます。ヤクルトは、ヤクルトレディーのサプライチェーンを活用して、地域の高齢者の健康をモニターしています。このように、企業は大きな変化を生み出す専門知識やリソースを有しています。

• 規模とネットワーク
大企業は、数十年かけて、問題が多発する地域もカバーする安定した流通ネットワークを張りめぐらせてきました。援助団体がアフリカの子供に水を届けたいとき、あるいは津波後の緊急通信を確立したいときには、コカコーラ、ダノン、シェル、ボーダフォンほか何千もの大企業が、他の組織が真似のできない規模とネットワークで支援する能力を持っているのです。

• アライアンスの構築
企業は、複数のステークホルダーをマネージメントし、パートナーシップを築くという組織的な複雑さに対応しなければなりません。一社では対応できない本当に困難な問題を解決する際に、アライアンスを構築し、企業、団体、国を越えたチームを作り上げることによって、企業は非常に大きな力を得ることができます。その事例としては、人材採用会社のマンパワーグループ、有力NGOが集結したコンソーシアムとフォーチュン500企業が、アライアンスを組んで、人身売買に反対する運動を実施したことがあげられます。

テクノロジーが支える
テクノロジーは、これら3つの組織的能力の全てを支える力を兼ね備えています。つまり、CIOは、ソフト開発チーム、クラウドリソース、データ処理、通信、コラボレーション・ネットワーク、サプライチェーン管理システムなどを活用して、このような取り組みを支援することができる特別な存在といえます。

このような活動は単なる利他主義以上のものです。グラットン教授の同僚や他の識者の研究によると、企業市民としての活動と利益の間には明確な関係があります。企業がその活力をグローバルな課題解決に使えば使うほど、優秀な人材(特に若い人材)が引き付けられ、今度は彼らがイノベーションを起こし、最終的には企業の成長や利益につながるのです。

良いことすべてに取り組むには、コストがかかり、社会貢献活動を多く行っている企業は利益が出ないと思われるかも知れません。しかし、研究によると実際には、良き企業市民として活動する企業のほうがより良いパフォーマンスをあげる傾向があるのです。

これは新たな世代が生み出したものかもしれません。いつの時代でも、自社が属する世界のことを意識する企業はあります。しかし、過去5年の間に大きな変化が表れています。社会問題を意識する次世代のCEOが出てきており、また、若い人、特に優れた人が就職する際に「この会社は、どのようなグローバルな課題を解決しようとしているのか」について聞くようになってきています。新しいリーダー・グループが生まれており、彼らは社会課題を理解し、課題に対して問題意識を持つ組織を作りたいと思うようになっているのです。