Photography: Bram Belloni

デジタル時代に求められる新たなITスキル

2017年3月

IT部門は、自社のケイパビリティを急速に向上させ、事業部門との連携を進めることで、デジタル化に向けて拡大する需要に対応しなければなりません。

デジタル化の脅威と機会により、多くの企業はIT人材の評価方法を再考すべき時期にあります。ITは何十年もの間、コモディティ、運用上のオーバーヘッドとみなされ、その多くはより低コストを求めてアウトソースの対象となっていました。しかし、デジタルから発想を得たビジネス・モデルの登場により、ITに対する見方が、180度転換ではないが、大きく変わってきています。CIOたちは、自社の迅速に変化するデジタルのニーズに効率的に対応するには、社内のビジネスに近いところに専門性を保持する必要があると認識しています。

これはまさに、欧州最大企業であるロイヤル・ダッチ・シェルの戦略にも織りこまれています。グループCIO(最高情報責任者)のジェイ・クロッツ氏は、同社のオイルやガス関連のプロジェクトの構築・運用能力を加速強化するために、ITオペレーションの主要な要素を内製化に取り組んでいます。特に、ソフトウェア開発やビッグデータ分析、IoTの適用などの分野を内製化しています。

CIOたちの抱える課題の1つは、リソースをどこに投入するかです。現在は、成功するために社内に保持しておかなければならないナレッジに重点を置いています。

アウトソースとクラウド・コンピューティングのアプローチは、企業の基本的なコンピューティングのニーズの適切な解決策になり得ます。ITの基本機能を常時提供することに長けた、テクノロジー・パートナーは世界中にいます。

「構築・運用の内製化や、事業部門とのインターフェースが、デジタルなバリューチェーンのより付加価値の高い部分を推進するために必須となっています。」

しかし、構築・運用やセキュリティなどの基本をおさえておかないと、真の付加価値を提供できません。確固たる基盤があるからこそ、デジタル・バリューチェーンのより付加価値の高い部分を担うことができるのです。つまり、ビジネスとITの間に立って、テクノロジーの適用方法を知っている自社の人材が必要となります。

シェルでは、事業部門から高まるデジタルへの要求に対応するために、内製化を進めることになりました。事業に近いところにいればいるほど、IT担当者が提供する価値もより高くなります。シェルでは、プロジェクトの構築・運用の内製化、ビジネスとのインターフェース、そして、そうしたビジネス上の価値の提供が成功の必須要件になっています。

もちろん、適切な人材、特に高いスキルセットが求められます。ITの複雑性も理解していて、ITの複雑さを伝えなくても、ビジネス上の判断をする場に立ち会うことができる人材です。自分の専門性を活かしてビジネスで望ましい成果を出せる人材がいれば、会社は成功するでしょう。

スキルの半減期

ITリーダーたちとチームのメンバー両者にとっては、デジタル・プロジェクトの構築・運用に求められるスピード感がさらに課題を大きくしています。新たなモバイル環境の開発においても、ドローンのプログラミングにおいてもそう言えます。最近シェルでもITプロフェッショナル向けのトレーニングに新カリキュラムを導入しましたが、「IT知識の半減期は2年にまで短縮されている」ことが分かりました。

このことは、専門性の習得方法がこれまでと変化したことを示しています。数年前までは採用後、プログラマーは6ヶ月間トレーニングを受け、同じ職種に何年も就いて知識を磨いていきました。しかし、現在のテクノロジーの変化のスピードでは、ITプロフェッショナルは常に好奇心を持って、ビジネスの問題を解決してくれる次世代のものに目を向けていなければなりません。多くの意味で、それが私の担当するCIOの管轄部門において最大の課題です。

ビジネスとの融合

しかし、8,000人のスタッフとパートナーを擁するシェルのITグループでだけに、こうした変化が起きているわけではありません。デジタル技術が事業のゴール達成における核となっており、周囲の事業部門からのITプロフェッショナルへの見方も明らかに変わりました。

シェルでは、事業部門は我々を協力するパートナーとみなしてくれています。ITチームを事業に組み込んでいこう、という判断が大きな促進剤になっています。常にIT担当者が事業部門の担当者と接している場合、大きな成功につながっています。これは、IT担当者が急速に事業のことを学習していることを意味しています。事業について学ぶことは容易ではありません。石油ガス業界では、専門家になるには10年かかると言われています。しかし、ITプロフェッショナルが事業に関われば、ビジネス側が求める成果も理解できるようになり、時間の経過とともにどう変化するのかも分かるようになります。

そうしたビジネスの理解は、請求や決済処理といった細かいものから、地震データ探索のサポート、小売店舗での顧客満足度向上まで多岐に渡ります。ビジネスが何を求めているのかを集中して考え、自らの技術知識と組み合わせます。うまくバランスを取って相乗効果が生まれると、最高の成果を得ることができます。