Photography: Bram Belloni

ビジネスとIT戦略の一体化

2017年3月

デジタル化が、いかにビジネスとIT戦略の境界を取り除いたのでしょうか。

ロイヤル・ダッチ・シェルは、通常の企業による取り組みとは桁違いの規模で、最先端のテクノロジーの利活用に取り組んでいます。ヨーロッパ最大の企業であり、Fortune Global 500で第5位にランクしている、巨大エネルギー企業は、グローバルに垂直統合された事業の成長と効率化のために、エンジニアリングとデジタル技術において、常にイノベーションを活用してきました。大量の地震データの分析による新規ガス田の探索や、小売店舗でのお客様体験の最適化においても同様です。

これらの取り組みを実現するのは、世界最大規模のIT部門です。このIT部門は、8,000人を超える社内スタッフとパートナーを擁し、年間予算は数十億ドルを超えています。このチームのトップとして、長年同社に勤務している、ジェイ・クロッツEVP(エグゼクティブ・バイス・プレジデント)兼グループCIO(最高情報責任者)が2015年7月からIT部門長に就任しました。

彼に託された課題は、その重要性がますます拡大しています。デジタル化は、シェルに新たな機会をもたらします。デジタルから発想を得たビジネス・モデルを活用するだけでなく、組織全体で高度なITを導入していきます。IT戦略とあわせて、デジタルをビジネスの最優先にした開発に取り組みます。

デジタル戦略は、長年、シェルが検討すべき最優先課題に位置づけられていました。それは、油田精製の自動化からお客様との関わりまで、多岐に渡ります。新たなデジタル革命がもたらすのは、より広範なプラットフォームです。主要な資産にのみ最先端のデジタル技術を適用するのではなく、あらゆる資産を対象にできるようになります。

つまり、IoTやビッグデータ分析などのテクノロジーを、生産やサプライチェーンなどのあらゆるレベルに拡大できるだけでなく、お客様とのあらゆる接点にも広げることができるのです。デジタル革新は、とてつもない機会をもたらします。新たなビジネス・モデルを作る機会や、私たちのビジネスの方法を劇的に向上してくれる機会などです。

ビジネスとITの融合

すでに、IT部門とサービスの受け手であるビジネス部門との関係も変わりつつあります。シェルにおけるデジタル・ジャーニーは驚くべきものになっています。新たな形でビジネス部門とともに取り組めるようになりました。彼らも、成功するにはITの活用が必要であることを認識しています。実際、現在はどのような会社でも、デジタル戦略と結びつけずに、大きな変化を実現することはできないでしょう。

ビジネスとデジタルの取り組みが融合しつつあります。ビジネス戦略とIT戦略は、もう分けて考えていません。ITがもたらすビジネス上の価値を全て提供できるよう、ビジネスとデジタルをつなげて考えています。

「ITのプロフェッショナルにとって、技術そのものよりも、自分たちが提供できるビジネスの成果に、より関心を持っていることが重要です。」

デジタル化は、企業のトップ主導で行なわれています。ベン・ヴァン・ビューデンCEO(最高経営責任者)を含む取締役たちは、デジタル戦略を完全に受け入れています。既存のビジネスの取り組みに関係するKPIや数値をベースに行動することもありますが、ITやデジタルの専門家の知識を組み合わせ、自社の資産から最大限の価値を得て、お客様にも最大の価値を提供するように取り組んでいます。

技術チームは思考の転換が求められました。テクノロジーが、これまで以上に革新的で、ワクワクし、急速に変化する時代はありませんでした。しかし、ITプロフェッショナルたちは、テクノロジーそのものよりも、自分たちが提供できるビジネスの成果に、より関心を持っていることが重要です。自分のチームにも、新たなテクノロジーを探求し、イノベーションを起こし、そうした技術によっていかにビジネス上の課題を解決し、価値を提供できるかを考えるように促しています。しかし、最終的には、ビジネス・グループが成功を享受できるように取り組むべきでしょう。

また、役員会の参加メンバーにも変更がありました。今では、重要なビジネス上の意思決定がなされる場合には、CIO(最高情報責任者)も同席することが求められます。現在の会社にとって、ITの影響を考えずに大きな判断を下すことは非常に難しいのです。新たなビジネス・モデルや、顧客とのさらなるエンゲージメントにおけるデジタル化の機会は何でしょうか。どのような最適化が可能でしょうか。デジタル戦略がもたらすものは、ビジネス価値そのものなのです。