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Image: Emmanuel Fradin

情報のインターネットから価値のインターネットへ

2016年7月

ブロックチェーン技術を用いると、銀行、公共企業政府といったこれまで利用していた仲介者を利用せずに、金銭、知的財産などの権利や資産を直接、安全に交換することができるようになり、ビジネスと社会に劇的なインパクトを与えます。

ブロックチェーン技術は、デジタル通貨ビットコインのベースとなる「分散型台帳」に使われていました。将来性が誇張されすぎる場合もありますが、今ではより幅広い用途に活用されています。しかし、ブロックチェーンに重きを置く支持者の声はますます増え、展望の深さは無視できないものとなってきています。ベンチャー投資家、技術アナリスト、経営指導者、研究者、さらにはITリーダーまでが興奮の渦に巻き込まれています。

デジタル業界の大物、ブラウザ技術の開拓者であり、Facebook、Twitter、Pinterestへの投資家でもあるマーク・アンドリーセンが昨年ワシントン・ポストで 「まさにこれこそ私たちが長年待っていたもの。分散型信頼ネットワークはその必要性が認識されていたにも関わらず、長年開発できませんでした。」と語っています。

また、元IT担当役員であり、ベンチャー投資家のウィリアム・ムガヤール氏は次のように語っています。「1990年はWebがインターネット上の第1階層でした。ブロックチェーンはインターネットで2番目に重要な上位層です。津波のように前に進み、途中にあるもの全てを飲み込んでいます。」

"今日の情報のインターネットでは強力な仲介なしで価値を保管、移動、取引することはできません。 それをブロックチェーンが解決します。"

ブロックチェーンの基礎となるテクノロジーは、次世代のインターネットを象徴しています。これまでの40年間はインターネットから得られる情報を活用していましたが、これからはブロックチェーンのおかげでインターネットから価値を生み出すことができるようになります。今までのWeb中心のインターネットは、情報の公開が主たる目的であり、価値を交換する機能はありませんでした。今後は、ブロックチェーンによってピアツーピア(P2P)の価値交換が可能になります。

何か情報を送る場合、実際にはその情報を送っていません。エクセルでもパワーポイントでもワード文書でも電子メールでも、そのコピーを送っているだけなのです。結局のところ、情報中心の媒体であるWebは相互にリンクされたページとプログラム言語(HTML)を基にしており、直接的に価値の交換を行うようには設計されていません。例えば、オンラインで送金する人は、直接、価値を送るわけではありません。 その代わりに、銀行、クレジットカード会社、ペイパル、ウエスタンユニオンのいずれかの仲介者に指示を送り、価値を渡すのです。シェアリングエコノミーのプラットフォームであるAirbnb経由で部屋を借りる場合でも、インターネット経由で直接行うわけではなく、第三者のブローカー経由で行います。そして、 第三者が介在する価値交換では当然ながらコストが掛かってしまいます。

情報のインターネットはすばらしいものですが、大きな弱点がありました。強力な仲介者なしで価値を保管、移動、取引することはできないのです。それをブロックチェーンが解決します。

ブロックチェーンによって行われるピアツーピアの価値交換は、複雑で強力なITアーキテクチャに基づいています。ブロックチェーンの本質は、多数のデバイスに分散されたクラウド型のデータベースです。トランザクション記録をデバイスに収容し、グローバルに分散したブロックチェーンで価値交換した台帳を管理します。その保全性、パフォーマンス、改ざんの抑止はブロックチェーンを継続的に相互監視することによって保証されます。 基礎となる技術はオープンソースで作られているので、各企業は自由に技術革新が可能であり、また、強力な暗号を使用してセキュリティを確保しています。

仲介者を無くす力

ブロックチェーンの支持者にとっても、情報を移動できる機能が良いことは当然ですが、資産に関しては異なります。しかし、金銭、株、投票、飛行機のマイル、セキュリティ、知的財産、音楽、科学的発見など、誰かにとって価値がある資産を情報のインターネットで公表するのは良い考えではありません 。

例えば、誰かが€100を他の人、あるいは企業に送りたい場合、その人は€100やそのコピーを持たなくなることが重要です。一方で、アーティストがオリジナル作品を提供する場合は、その商業的価値が損なわれないことが重要です。数十年の間、この問題を解決している唯一の方法は、取引に参加している様々な関係者を認証し、信頼を確立する強力な仲介者を置くことでした。そして、全体として、これらの仲介者はすばらしい役割を果たしていますが、一方では大きな制限も出てきています。

世界規模の台帳

第一に、仲介者は手続きにしばしば遅れをもたらします。例えば、喫茶店で支払いにカードを利用した場合は、その決済が銀行明細書に記載されるまで数日かかります。その理由は、多くの仲介者が1970年代から80年代のメインフレームによる古いシステムで処理しているためです。 そのような仲介者は余分な負担を負わせることで、『システムに課税している』ようなものです。

これらの大組織が持つ大きな力は、進歩を妨げていることが他にもあります。開発途上国の数十億人もの人々を、これらの『信用システム』に参加する資格がないという理由で、グローバル経済から疎外しています。また、大手銀行、クレジットカード会社、大手テクノロジー企業や政府さえも我々の情報を収集しています。農民からミュージシャンまで、自ら創造した資産でお金儲けができないだけでなく、ビジネスや社会の組織構造に参画できないのです。さらには、情報の集中はプライバシーを脅かすことにつながります。

"もし、強力な仲介者がいなくても、グローバルに分散した価値のインターネットがあり、信頼を確立し、資産を保有し、やり取りを行い、グローバルに取引ができると仮定すると、これは革命的な力になるでしょう。 それがブロックチェーンの何たるかだと言えます。"

この技術が本格的に採用されるには、致命的な問題が山積みです。また、今までは仲介者によって集中処理されていたデータが監視をすり抜けるのではないかと、この抜きん出た力は政府を恐れさせ、利用制限をかける可能性があります。他にも、ブロックサイズが大きくなるなど、解決すべき技術的な問題も出てきます。セキュリティ面では、スマートなエージェントがこのようなピアツーピアの世界に解き放たれ、悪いエージェントが「銀行口座を持ったウイルス」に化けるかもしれません。

しかし、どれもブロックチェーン技術を追求しない理由にはなりません。数年間は誇張、誇大宣伝が広まるでしょうが、WWWがそうであったのと同様、インターネットの第2階層であるブロックチェーンがビジネスや社会にもたらす利益は無視できないほど魅力的なのです。